• 石飛道子 『ブッダ論理学五つの難問』

ブッダの教えの中に論理学が見える、そしてそれをすくい上げてみせる、ということを目指されているようです。本当にブッダが論理学を展開しているのかということについては、あまり心配しないでほしいとのスタンスで書かれています。その辺りは専門家の厳しいcheckを待たなければなりません。著者ご本人もちょっと大胆すぎるとお感じの内容なので私も「本当なのか?! 本当ならすごい!」と少し心配になってしまいますが、著者の人柄があまりいじわるな突込みを読者に思わず控えさせ、とりあえず洗いざらい言いたいことを言ってもらうまで温かく見守って差し上げたくなる、そんな楽しい1冊になっています。しかしほんとに著者は幸せそうです。うらやましいな。


  • Thomas Jech ‘On Godel's Second Incompleteness Theorem’

A short proof of Godel's second incompleteness theoremとのこと。論文は全部で3ページです。


論文導入部の一部には以下のように書かれています。

かつて毛沢東アメリカ帝国主義を「張子のトラ」と表現したことがあった。結論からいえば私は,羽入氏が批判しているのはヴェーバーならぬ「張子のヴェーバー」であると考える。羽入氏は,ヴェーバーがそのように主張するのであれば,文献的知識はこれほどでなければならないし,資料的根拠もこれこれでなければならない。ヴェーバーはその水準を満たしていない,資料的根拠も欠けていると批判しているのである。しかし,それは本当に必要な知識なのか,不可欠の資料なのか。羽入氏の批判で「張子のヴェーバー」はズダズダにされて見る影もないが,現実のヴェーバーの傷は殊の外少ない。羽入氏が指摘するように,確かにヴェーバーには思い違いや過失もあるが,それはとても致命傷といえるものではないのである。むしろ,羽入氏が発見した文献的諸事実は,ヴェーバーの議論を補強するものとさえ私には思われる。こういえば,私は羽入氏に勝る超のついた「ヴェーバー病」患者ではないかといぶかられる心配があるが,その最終的な診断は賢明な読者に委ねるとして,私の言い分をお聞きいただくことにしたい。

この論文は以前読ませていただきましたが、抑制が効いていて、しかもわかりやすく、とてもよい読後感を持ちました。ウェーバーの専門家ではありませんので、この論文内容の是非は判断できませんが、羽入氏に対して感情的に反論すまいと無理に気持ちを押しとどめて論を進めるのでなく、割と自然に落ち着いて極力公平であろうとしている感じがしました。読んだまま論文を入手し忘れていたようなので今回入手。