Some Anecdotes

次は今日ちょこっと読んだり見たりした本。

  • Roman Kaluza  Through a reporter's eyes : the life of Stefan Banach

写真がいくつか載っている中にZylinskiが写っているものを見つける。これはあの、いわゆる2変数のシェーファー関数には不両立|と両否定↓の2つしかないことを証明した

    • Eustachy Zylinski “Some Remarks Concerning the Theory of Deduction” in: Fundamenta Mathematicae

のZylinskiなのでしょうか?う〜む。

  • Karl Menger  Reminiscences of the Vienna Circle and the Mathematical Colloquium

Karl MengerはLesniwskiに会った時、‘Are youngsters made professors in Vienna?’とあからさまに言われたようである。Karl Mengerの方は苦笑してそれに応えたみたいである。Lesniewskiという人はよく言えば裏表のない正直な人、悪く言えば他人に対する気遣いの欠如した人だったのかな?

  • E・T・ベル  『数学をつくった人びと 3』 ハヤカワ文庫NF

この本のG.ブールの章を読む。しかしこの文章は歴史学ではなく物語なのでしょうね。きちんとすべての逸話について裏を取って書いているのでしょうか?かなり脚色されてしまっているような気がします。というのも文中で哲学者の方のハミルトンを「愚鈍で怠惰」とののしり、ヘーゲルとロッツェを「こっけい」だとこき下ろし、述語の量化の話題については「死んだ話」だとして切り捨てていますが、これらはまともな学術書が使う文言ではありませんよね。
「愚鈍で怠惰」なハミルトンと「死んだ話」である述語の量化の話題についてはC.I.Lewisによって次のように評されています*1

The beginning of thought upon this subject[=an attempt to invent a calculus of logical relations in extension] in England marked by the publication of numerous treatises, all proposing some modification of the traditional logic by quantifying the predicate. […]Hamilton was certainly the center and inspirer of a new movement in logic, the tendency of which was toward more precise analysis of logical significances. […][T]his movement accomplished two things for symbolic logic: it emphasized in fact −though not always in name− the point of view of extension, and it aroused interest in the problem of a newer and more precise logic.These may seem small, but whoever studies the history of logic in this period will easily convince himself that without these things, symbolic logic might never have been revived. Without Hamilton, we might not have had Boole.

またブールのお父さんの描き方も怪しく感じられます。ベルさんの記述によるとブールのお父さんはかなり無知無学の人みたいに思われますが、上記山口さんのレポートによればそれとほとんど反対に書かれている感じがします。どちらが本当のお父さんなのか?
それにベルさんによるとブールはいわゆる立身出世の欲望に駆られていたみたいな記述をされていますが、やはり上記山口さんによるとブールは宗教的な信仰心を持った人で世のため人のため家族のために真面目にこつこつおごり高ぶらずに生きていた人とされているようで、この辺でも両者の記述に違いがあります。どっちが本当のブールなのか?*2

*1:C.I.Lewis A Survey of Symbolic Logic, pp.36-37.

*2:「宗教的な信仰心を持った人で世のため人のため家族のために真面目にこつこつおごり高ぶらずに生きていた人」でありながら、なおかつ「立身出世の欲望に駆られいた」こともありえなくはないが、それはちょっと無理がありそうな気がする…。