読書概要: Formal metaphilosophy in Finland

今日はスター・バックスで息抜きとして以下を読んだ。

  • Jan Wolenski  “Formal metaphilosophy in Finland”, in: Poznan Studies in the Philosophy of the Sciences and the Humanities, vol. 80, 2003

主に大戦後のフィンランドにおける、論理的手法を重視した哲学の特徴を概観している論文。しかし論理学を重視した分析哲学とは何かを考える際にも参考とできる論文になっている。なかなか面白く読んだ。


フィンランド分析哲学はE.Kailaに始まるそうである。そしてE.Steniusとvon Wrightが現れ、その後にJ.Hintikkaが来るという流れであるそうだ。E.Steniusとvon Wrightのうち、後者の方がフィンランド分析哲学の主流であったみたいである。

    • Kalia

Kailaの哲学的姿勢は、(1)論理分析は有益、(2)論理分析は言語分析のみに尽きない、(3)実在論が正しい、(4)論理学においては形式と内容を区別すべきで、数理論理学は形式にかかわり、応用論理学は内容にかかわる、(5)哲学的概念に対する様々な直観的データは、どれを使っても構わない、というものらしい。彼は論理実証主義者の陣営に入るようである。しかし典型的なそれではなかったようだ。

    • Stenius

E.Steniusの哲学観によると、論理分析は重要だが万全ではなく、哲学は言語分析に尽きるものではないとするみたいである。彼はいわゆる人工言語学派と日常言語学派のよいとことを併せ持った立場にあったようで、しかしどちらかといえば人工言語学派寄りだったようである。彼の哲学観に対しては‘No critical philosophy without logical correctness’とまとめるのがいいらしい。

    • von Wright

G.von Wrightは初めCarnapの論理実証主義に強い影響を受ける。この主義に彼が見たものは、グランド・セオリーをめぐる「神々の争い」に見切りをつけ、各自の価値観に基づいて選択されたminimalなproblemsの解決にいそしむ哲学的スタンスであり、それは革命的だと感じられたらしい。その後、後期のWittgensteinの教えを受けて科学的学問とはまた別の哲学観の教えを受け、激しく心揺さぶられたらしい。von Wrightの哲学観は、(1)哲学は科学(science)ではない、(2)論理分析が哲学の方法である、(3)いみの明晰化が哲学の第一の関心事である、というもののようである。彼によると哲学とは哲学的概念を直観的に捉え、そうして直観した内容を解明すること(explication)である。そしてこうして解明した内容を論理学に写し代え、そうして写し代えられた論理学からparadoxesが出てくるならば、それは初めの解明か、後の論理学への写し代えに問題があったのである。また論理学を構成している法則(rules)は、哲学的概念の直観を解明する際のルールともなる点で、論理学と哲学は密接につながっている、ということらしい。さらにvon Wrightの考えによるならば、数理論理学に対する哲学的論理学とは、哲学的概念に対して直観した内容を解明し論理法則として体系化したもののようである。

    • Hintikka

J.Hintikkaは、フィンランドの哲学に初めて現代的な意味での形式的意味論を導入したそうである。彼の特徴は、意味論をせっせと開発し、哲学的概念の意味論的分析にいそしんだことにあるようだ。彼によると、哲学的命題の意味論を探究する際に論理学を利用し、この時哲学的命題に含まれる哲学的概念の深い理解が得られるとともに、その哲学的概念に対する直観的理解が妥当であるかどうかをその論理学によってチェックできると考えたみたいである。彼によれば、認識論理は、日常の認知的な言葉の働きを説明する理論上のモデルであり、これは日常の言葉遣いに変更を迫るものではなく、それらの言葉をより深く理解しようとしているのであるそうだ。
以上のようなフィンランドの論理学的な分析哲学において一貫して問題であり続けたことは、日常言語に見られる哲学的概念を含んだ命題を、いかにして妥当性を保ちつつ論理学上の言葉にパラフレーズするかということであったみたいである。フィンランドではこの際の論理学ツールを強力に開発し、それに成功してきた。フィンランドの論理学的な分析哲学に対しては、哲学における論理学の役割として次のLesniewskiの言葉がぴったりくるようである。すなわち‘Logic is a formal exposition of intuition’。

以上、おおまかにまとめ、おおまかに書き下した。詳細・正確には原論文に当たる必要がある。