読書備忘録: Wittgensteinian Modal Logic

昨日は以下を読んだが、

  • Jan Wolenski  “Formal metaphilosophy in Finland”, in: Poznan Studies in the Philosophy of the Sciences and the Humanities, vol. 80, 2003

その中でvon Wrightを解説しているセクションがあり、そこでWittgensteinと様相論理に関して軽く触れられていた。それで関心が再燃し、次の文献を持っていたことを思い出し、本日ざくっと読んでみた。

  • G. von Wright  “Modal Logic and the Tractatus”, in his Wittgenstein, Basil Blackwell, 1982

Wittgensteinが様相論理学を展開していたという話は、聞いたことがないし、そのような事実もなかったような気がしたので、「様相論理と『論考』」というのは一体どういうことなのだろう、どのようなつながりがあるのだろうと、興味を前から持っていた。ではどのような接点があるとvon Wrightさんは言うのか? その肝心な部分だけを以下に記しておく。なおひどく煩瑣になるため、細かいものを含め註の類いを、すべて脚注に逃がす。

おそらくWittgensteinは『論考』において、少なくとも命題を3つに分けていたように思われる。それぞれトートロジー*1、有意味な命題*2、矛盾*3、である。von Wrightさんの『論考』読解によると、トートロジーは状況*4の確実性*5を表し*6、矛盾は状況の不可能性*7を表している*8。また命題が有意味であることの本質は、その命題が真であり得る*9こと、かつその命題が偽であり得る*10ことにある*11。これら真であったり偽であったりし得る状況の可能性*12は、有意味な命題によって表される*13。そしてこの可能性は、有意味な命題によって、語られる*14のではなく、示される*15 *16。この示されること*17というのは、内包的なものである。いずれにせよ『論考』における命題の有意味性というのは内包的な様相概念なのである。つまり以上から、命題の有意味性をめぐって『論考』と様相論理とはつながるのである、ということのようである。
さてそれでは上記のような『論考』に見られる様相の観念はどのような様相(命題)論理として表されるだろうか? あるいはどのような既存の様相(命題)論理に近いのだろうか? von Wrightさんの意見ではS5だそうである…。


以上ざっくっとだけまとめた。『論考』は極度に難しい本のため、見当違いのまとめになっているかもしれないとおそれる。

*1:tautology

*2:significant proposition

*3:contradiction

*4:a state of affairs

*5:certainty

*6:express

*7:impossibility

*8:『論考』5.525

*9:can be true

*10:can be false

*11:『論考』4.01, 4.05, 2.223, 2.222, 2.21, 4.06, 2.221など? von Wrightさんは、2.21と2.23(2.223?), 2.24(2.224?)を根拠に挙げておられるが、それは間違いではなかろうか? あるいはそこまで言わなくとも説得力が少し足りないように感じられるのだが…。それとも私の勘違いか?

*12:possibility

*13:『論考』5.525

*14:say

*15:show

*16:『論考』4.022, 4.1212, 4.121, 5.525より

*17:可能性のこと。なおトートロジーが示すのは必然性、矛盾が示すのは不可能性である。