Peano's Definitions of Abstraction

Abatraction Principleに関連して、しばしばその来歴が語られる際にPeanoのDefinitions of Abstractionが言及される*1
上記入手文献中の2本目、Vuilleminさんの論文冒頭を見ると、そのPeanoのDefinitions of Abstractionが紹介されている。
そこで以下にそのPeano's Definitions of Abstractionがどのようなものか、記しておくことにする*2


次がPeano's Definitions of Abstractionである。

    • D hu,v . ⊃ . φu = φv . = . pu, v Def.

Dはこの式の名前である*3。u, vはobjectsである。hはobjects u, vに対するassumptionである。φuは、uからabstractionによって推論される新たな対象で既知のものではないとする。φvも同様である。pはobjects u, vの条件、またはu, vに対する関係であって、このpは既知の事柄である。最後に、Def.はこの式が定義式であることを表わす。
この式全体を解するならば、uとvにhという前提が成り立っているとすると、φuとφvが等しいのは、uとvにpという関係が成り立っている時かつその時に限る、ということになる。
もう少しだけ砕いて言うと、uとvにhということが成り立っているとすると、未知の対象φuとφvが同一であるということと、uとvに関して既知であるpということが成り立っているということとは変わらない、となる。


具体例を示して理解を補助しよう。
hを直線であることとする。pu, vを、uはvと平行であることとする。すると上記Dは大略以下のようになる。

    • uとvを直線とすると、φu = φv と、uはvと平行であるということとは、同値である。

ここからφは方向のことだとわかる。つまりφu, φvは、それぞれuの方向、vの方向だということになる。


もう一つ例を挙げる。
hをクラスであることとする。pu, vは、uとvに一対一対応(全単射)があることとする。するとDは次のようになる。

    • uとvをクラスとすると、φu = φv と、uとvは一対一に対応するということとは、同値である。

ここからφu = φv は同数であることを表わしているとわかり、φu, φvはそれぞれuの数、vの数であることとなる。したがってつまるところφは数のことだとわかる。
このことをPeanoは次のように書いている。

    • a, b ∈ Cls ⊃ {(Num a = Num b) = (∃(bfa)rcp)} Def.

以上がPeano's Definitions of Abstractionである。

*1:例えば、Peter Simons, “What Is Abstraction and What Is It Good for?”, in: A.D. Irvine ed., Physicalism in Mathematics, Kluwer Academic Publishers, The University of Western Ontario Series in Philosophy of Science, vol. 45, 1990, p. 27など。

*2:以下の説明はすべてVuilleminさんの論文のpp. 305-6に依拠している。ただ、もちろん本来ならばPeanoの本をひも解いて確認すべきことではあるが、まぁ今回は孫引くことにとどめておいて、原典に当たるのはまたの機会としておく。

*3:以下では面倒なので、すべて引用符を省く。