読書: Hale & Wrightさん 数学の哲学へ

上記本日入手のPhilosophy of Mathematics 5 Questionsをcafeで、調子も上がらないしちょっと寒くて集中できないので、何気なくあちこちのページを開いて拾い読む。面白い。
Fregeを勉強しようと思っている人間なので、自然とB. Haleさん及びC. Wrightさんの発言に目が行く。
どうしてお二人が数学の哲学に心惹かれるようになったのかを、以下簡単に記す。


まずB. Haleさん*1
きっかけはDummettさんの“Truth”という論文を読んだことに始まる。これをお読みになって数学の哲学が極狭い範囲を扱う周縁的な哲学なのではなく、認識論や形而上学に対しても重要な哲学だということを知ったのだそうである。
加えてDummettさんの講義に出て、数学の哲学においては、他の分野の哲学の問題が、よりくっきりとかつはっきりとした判断を迫られる形で現われてくるという点で、興味深く有用な哲学の領域だとお感じになられたようである*2
そしてC. Wrightさんと話を持つ機会を得、Fregeと単称名のことを考えていたところ、その仕事をまとめ上げろとWrightさんに言われてAbstract Objectsという本にしたらしい。Wrightさんとの議論はこの上なくexcitingなものだったようである。


次にWrightさん*3
元々Cambridgeで勉強していた頃、logicやphilosophy of math.については勉強させられたという下地があり、それによってある程度の方向性ができていたらしいが、中でも数学の応用可能性の問題が重要であると感じていたらしい。算数や数学は、普段の思考や高度な科学などに使われて、私たちと現実の世界との関係を橋渡ししており、しかも算数や数学によって私たちは世界の核心とも言える部分に関わっているようである。ならば世界を一般的に理解しようとしている哲学が数学の応用可能性の問題に取り組まない手はない。まずは大体そんな理由から、数学の哲学の重要性をお感じになったようである。
またDummettさんの著作を通して、いかに数学の哲学においては他の哲学上の問題が明確な形で定式化されているのかを教えられ、数学の哲学の大切さをご理解なされたようである。これは先のHaleさんと同じである。


「数学の哲学においては他の哲学上の問題が明確な形で定式化されている」ということは、私も飯田先生の文章から学ばせていただいた。

この文において飯田先生も「数学の哲学においては他の哲学上の問題が明確な形で定式化されている」という見解の擁護者としてDummettさんの名と彼の論文集Truth and Other Enigmasへの参照を促しておられます*4


皆同じような影響をDummettさんから受けているんですね。

*1:Hendricks and Leitgeb, pp. 137-8.

*2:ちなみにDummettさんの論文“Truth”の終わりのところでは、自然言語の意味の理論におけるいくつかの立場が、数学のplatonism, intuitionismの立場に引き写すことができるという話が出てくる。マイケル・ダメット、「真理」、『真理という謎』、藤田晋吾訳、勁草書房、1986年、30-4ページ参照。

*3:Hendricks and Leitgeb, pp. 301-3.

*4:飯田、276-7ページ、及び註19を参照。