読書: The Genesis of “On Denoting”

以下の論文を一通り読み終える。

  • Ray Perkins, Jr.  “Why “On Denoting”? ”, in: Russell: the Journal of Bertrand Russell Studies, vol. 27, issue 1, 2007, After “On Denoting”: Themes from Russell and Meinong, edited by Nicholas Griffin, Dale Jacquette and Kenneth Blackwell

The Theory of Descriptions 生成史に関する論文。どのような訳で、the theory of descriptions は考えられたのか、ということを検討しています。特に、近頃出てきている研究*1に対し、幾ばくかの修正を加えるよう意図された論文です。
近頃出てきている研究とは、Russell自身の発言とは異なって、彼のthe theory of descriptions は、自身の肥大化したontologyをclearanceするために考え出されたのではない、ということを主張するものです。これを幾分修正しようとしているのが、今日読んだ論文です。
この論文については、興味深いことに、最近出版された文献にも再録されている次の論文と、ポイントとなる主張が似ていて面白く感じられます。

  • 中川大  「初期ラッセルにおける「表示」の概念 −1903〜1904年の草稿を中心に」、日本科学哲学会編、野本和幸責任編集、『分析哲学の誕生 フレーゲラッセル』、科学哲学の展開 1、勁草書房、2008年。初出、『科学哲学』、vol. 34、no. 1、2001年。

中川先生は論文冒頭で、Russellのthe theory of descriptions というものは、propositional functions の理論に基づいて作られている、と主張されておられますが、今日読んだPerkins論文でも、そもそもthe theory of descriptions とはpropositional functions に関する理論なのだ、と述べておられます*2

しかし細部に渡ってPerkins論文を「理解した」とはまだ言えないので、先程来、再度読み直し始めました。
もう一度全部読み直してみよう*3


おやすみなさい。

*1:ここに言う近頃出てきている研究については、かつてこの日記でも詳しく説明したことがある。2006年6月10日の日記を参照。なお、「近頃出てきている」と言っても、少なくとも10年以上前から既に言われていることである。

*2:Perkins, pp. 37-40, especially pp. 37-39.

*3:中川先生の論文も『科哲』でかつて読んで、すごく面白いなあと感じました。しかしこちらもきちんと理解しているとは言えないので、またそのうち読み直したいと思います。