Peter Geach, who had already indicated the so-called Frege's Theorem and the consistency of Hume's Principle before anyone did.

(以下の‘Frege's Theorem and Hume's Principle’のsectionは、昨日の日記の再録です。)

これから書かれる記述は、かなり大まかなメモです。


Frege's Theorem and Hume's Principle: The point of departure for Frege Renaissance
数学の哲学におけるFrege Renaissanceの起爆剤となった数学的業績には二つあると考えられる。それは次の二つ。


a) Frege's Theoremの証明
b) Hume's Principleの(相対的)無矛盾性証明


当初 Fregeは


1. Axiom (V)の設定
2. 概念の外延に訴える基数の定義の設定
3. 上記1., 2. を使い、現在では通常二階の論理と見なされる理論の中でHume's Principleを証明
4. 3. のHume's Principleと二階の論理によってPeano's Postulatesを証明


という、四段階のstepを経て、数論における諸種の定理を証明しようとしていたと考えられる*1
しかし1. と2. の段階でRussell's Paradoxにより、このprogrammeは潰えたと考えられている。

これに対し、1. と2. を外し、3. のHume's Principleを仮定して、そこから4. にあるようにPeano's Postulatesを証明できるのではないか、という予想が立てられ、この予想が正しいことが明らかにされた。この結果のことを‘Frege's Theorem’と呼ぶ。Frege's Theoremが成り立つとするのなら、Russell's Paradoxの原因となった上記1. と2. の段階を回避しているので、ひとまずはFregeに致命傷を与えたparadoxを避けながら数論の種々の定理を演繹できそうである。これは差し当たり、哲学抜きの数学的な観点からは、Frege's logicist programmeのpartialな実現と見なすことができる。
次に検討されなければならないのは、Hume's Principleが無矛盾かどうかである。この原理と二階の論理とでparadoxが出てこないと言えるかどうかである。出てくれば元の木阿弥だが、出てこなければ、哲学抜きの数学的な観点からは、Frege's logicist programmeの充分な実現と見なすことができる。
以上から、Frege's Theoremが成り立つということと、Hume's Principleが無矛盾であることが明らかにされるならば、数学的な観点からは、Frege's logicist programmeの技術的な可能性が大きく開かれる、もしくはその可能性がはっきりと保証された、ということをいみすることになる。
そして実際にFrege's TheoremとHume's Principleの(相対的)無矛盾性の証明が成し遂げられた。これを受けて多くの数学の哲学者や論理学の哲学者が、Frege's logicist programmeの哲学的な再検討に入り、その結果、現在の数学の哲学におけるFrege Renaissanceが出来したものと考えられる。


Geach's achievements
上において、Frege's TheoremとHume's Principleの(相対的)無矛盾性の証明が成し遂げられたことが、Frege Renaissanceの出発点となった数学的成果であろうと記した。


通常、Frege's Theoremを予想し、それが成り立つことを示したのはCrispin Wrightさんだろうと思われる。1983年頃のことである*2
ただ、Frege's Theoremの予想は、それ以前になされていたことが、現在ではしばしば言及される。それはCharles Personsさんが既に1965年の段階でなしていた、というものである*3。そうであるならば、予想自体に限れば1965年のCharles Personsさんまで予想の表明はさかのぼることになる。


一方、Hume's Principleの無矛盾性の予想は、上記Crispin Wrightさんの1983年の仕事で触れられ、そのすぐ後にその予想は正しいとの指摘がなされている。Hume's Principleの無矛盾性の指摘は、1983年のA. Hazenさん、1984年のJohn Burgess, Harold Hodesさん方の仕事でなされている*4
これら、Frege's Theoremの予想と証明およびHume's Principleの無矛盾性証明を、名実ともに二つながら完成させたのが、おそらくGeorge Boolosさんの1987年における仕事なのであろう*5
なお、同じ年にNeil TennantさんもHume's Principleの無矛盾性証明を試みているようである*6


以上の事柄を、時間の流れの中に位置付けると次のように簡略化できるだろう*7


Frege's Theorem

    • C. Persons [1965] → C. Wright [1983] → G. Boolos [1987]


Hume's Principle

    • C. Wright [1983] → A. Hazen [1983] → J. Burgess [1984], H. Hodes [1984] → G. Boolos [1987], N. Tennant [1987]


さて、Geachさんである。


以下、後日に続くと思う…。

*1:この四段階の図式については次を参照した。Roy T. Cook, “Introduction”, in his ed., The Arché Papers on the Mathematics of Abstraction, Springer, The Western Ontario Series in Philosophy of Science, vol. 71, 2008, pp. xviii-xix.

*2:C. Wright, Frege's Conception of Numbers as Objects.

*3:C. Persons, “Frege's Theory of Number.”

*4:A. P. Hazen, “Review of Wrigth(1983),” J. Burgess, “Book Review of Frege's Conception of Numbers as Objects, by Crispin Wright.” H. Hodes, “Logicism and the Ontological Commitments of Arithmetic.”

*5:G. Boolos, “The Consistency of Frege's Foundations of Arithmetic.”

*6:Neil Tennant, Anti-Realism and Logic: Truth as Eternal.

*7:下記の矢印は、必ずしも影響関係を表しているとは限らない。