Frank Ramsey's Illicit Love Affair!? Or His Unreturned Love for a Married Woman

昨日の日記に記した次の文献では、

  • “Letter from F. P. Ramsey to L. Wittgenstein, 11.11.1923”, in Brian McGuinness, ed., Wittgenstein in Cambridge: Letters and Documents 1911-1951, Fourth Edition, Blackwell Publishing, 2008

FregeにRamseyさんが言及されているので、入手してみた。RamseyさんはそこでFregeさんを賞賛しておられる。以下のようである。

I have not been doing much towards reconstructing mathematics; partly because I have been reading miscellaneous things, a little Relativity and a little Kant, and Frege. I do agree that Frege is wonderful; I enjoyed his critique of the theory of irrationals in the Grundgesetze enormously. I should like to read Ueber die Zahlen des Herrn H. Schubert but haven't yet found a copy only this wonderful advertisement which I'm sure you would like to read again.

この後、その広告文が続きます。
そしてその広告文が終わると次のような文が来ています。そこを読んで「おや? これは一体…」と思いました。

But I am awfully idle; and most of my energy has been absorbed since January by an unhappy passion for a married woman, which produced such psychological disorder, that I nearly resorted to psychoanalysis, […]

Ramseyさんもなかなかやりますね。しかし駄目だったですか? とても気の毒です。まだ彼は二十歳前後だったろうから、ちょっときつかったかもしれませんね。
この文を読んで手元にある以下の文献をひも解いて調べてみる。

  • Nils-Eric Sahlin  “Chapter 10: Biographical Glimpses”, in his The Philosophy of F.P. Ramsey, Cambridge University Press, 1990
  • Gabriele Taylor  “Frank Ramsey −A Biographical Sketch” in: Maria Carla Galavotti ed., Cambridge and Vienna: Frank P. Ramsey and the Vienna Circle, Springer, Vienna Circle Institute yearbook, 12, 2006

これらのうち、前者を走り読んだ限りは、関連する事柄は載っていないようだ。
後者の方には該当箇所がありました。それは論文の6ページ以下に載っています。


Ramseyさんは二回Viennaに行っています。一度目は1923年の9月でこの際はViennaには長居していないようです。そして二度目は1924年の3月です。おそらくRamseyさんが恋に落ちた女性に会ったのは、このうちの一度目の訪問ではなかろうかと思います*1。その女性はMargaret Pykeさんとおっしゃるようで、Ramseyさんは、Margaretとその夫君とによって友人として迎え入れられたようです。Ramseyさんはしばしばこのご夫婦と会い、ご夫婦も彼を歓迎してくれて、RamseyさんはMargaretに恋をしてしまったようなのですが、

But her feelings for him were nothing like his feelings for her, and for much of the time Frank was tortured by her apparent coldness and neglect of him*2.

ということだそうです。きついね、これは。Ramseyさんに同情します。大変だよね、まだ若いから、めげそうにもなるだろうけど、前を向いて歩いていくことだよね。うむうむ。


PS
Ramseyさんの伝記的事実に関しては次が大変有名なようである。

  • “Better than the Stars”, A Radio Recording Portrait of F. P. Ramsey, Broadcast on BBC Radio 3 on 27 February 1978.

この録音は、Cambridge UniversityのHPから聞けるようだが、放送内容のtranscriptをかつて自分のPCにDLしたものがあり、それを検索してみると、Ramseyさんのlove affairに関するような話題は出てきていないように見える。ただ、このtranscriptのdetaが壊れていて、正しく表示されない。もしかするとどこかに出てきているのかもしれないが、たぶん出てきていないと思う。
なお、J. M. KeynesさんによるRamseyさんのobituaryの類いが日本語に翻訳されているが*3、そこにもこの手の話題は出てきていないようだ。しかしobituaryでそんな話題が出てきたら、とんでもないことになるだろうけれど…。


以上、見直していないので誤字・脱字等がありましたら、すみません。
この後は、遅めのご飯を食べ、シャワーを浴びて寝ます。
おやすみなさい。

*1:Taylorさんの伝記と、Ramseyさんの書簡を読み比べてみると、腑に落ちない点がいくつかある。どちらかが間違っているのではないかと思われる点がある。しかし今は細かいことは置いておきます。

*2:Taylor, pp. 6-7.

*3:J. M. ケインズ、『人物評伝』、熊谷尚夫、大野忠男訳、岩波現代叢書、岩波書店、1959年。