入手文献: Grišin

  • V. N. Grišin  “Predicate and Set-Theoretic Calculi Based on Logic without Contractions”, in: Mathematics of the USSR-Izvestija, vol. 18, no. 1, 1982


この文献については次の文がその意義の一端を伝えてくれています。

 The comprehension principle (包括原理) は、任意のformula φ に対して、{χ:φ(χ)} の形の集合の存在を保証する。包括原理はFregeやCantorによって導入された、非常に強力な集合の存在保証原理であり、Fregeは一時期古典論理と包括原理によってすべての古典的数学を基礎付けできると主張したことでも知られている。しかし包括原理は古典論理の上では矛盾を導く [例えば Russell Paradox]。[…]
 Russell paradox を解決するため、いくつかの解決策が提案された。一番広く知られている解決法は、古典論理は保持するが、包括原理を制限するというものである [例えば ZFC]。[…]
 矛盾を回避するための別のやり方も存在する。ここでは、包括原理を保持するかわりに、古典論理を制限して矛盾が導出できないくらい弱める、というやり方を紹介しよう [いわゆる contraction rule (同じ仮定は何度でも用いてよいという規則) を制限する手法]。[…]
 Grišinは、このContraction ruleが Russell paradox の導出に本質的な役割を果たしていることを示した。つまり、古典論理から contraction rule のみを除去した体系を Grišin logic (GL) と呼ぶとき、GL では包括原理を仮定しても Russell paradox は起こらず、矛盾が起きないことを示した [Gri82]*1

引用文末尾の「[Gri82]」は、引用者によるものではなく、引用元となった論文中にあるものであり、それはつまり今日の日記で上に記した入手文献のGrišin論文のことです。
Grišinの業績の意義については

  • 照井一成  「素朴集合論コントラクション」、『科学哲学』、36巻、2号、2003年

も参照。


Comrehension Principle を制限して矛盾を抑えるのではなく、Contraction Rule を制限して矛盾を抑えること、それが可能であること、このことはFregeのlogicを理解する上で、大変重要な結果であろうと思われます。
Fregeのlogicに与えた致命傷の原因は、一体なんであったのかについて、再考を迫るような重要な結果だと思われます。


寝る直前にこの文を書いています。
読み直しておりません。
間違っていましたら申し訳ありません。
おやすみなさい。

*1:矢田部俊介、「包括原理のある集合論と超準的自然数」、坪井明人 研究代表、『自然数の超準モデルにおける1階定義可能性の研究』、RIMS研究集会報告集 2005年9月12日〜9月15日、数理解析研究所講究録 1469、京都大学数理解析研究所、2006年2月、4-5ページ。