今年も残すところあと1ヶ月程となった。みすず書房さんが毎年2月に自社のPR誌で前年に読んだ書物で興味を持ったものを挙げて下さいというアンケートをされているが、自分にとってこの一年に触れた文献で興味を抱いたものは何だったろうかと、ちょっとはやいが思い返してみた。いつもならその年に購入した本を2〜3冊挙げるところだが、今年は本よりも、細々とした論文関係の文献が思い出される。それを以下に掲げてみよう。中心となるのは岡本賢吾先生の文献である*1。順不同で掲げます。
- 岡本賢吾 「ラッセルのパラドクスと包括原理の問題」、『現代思想』、青土社、1997年8月号
- 同上 「「純正なパラドクス」は、なぜパラドクスか」、『春秋』、春秋社、410号、1999年
- 同上 「訳註」、G. フレーゲ、「シェーンフリース「集合論の論理的パラドクス」について」、岡本賢吾訳、野本和幸、飯田隆編、『フレーゲ著作集 5 数学論集』、勁草書房、2001年
- 同上 「編者解説」、岡本賢吾、金子洋之編、『フレーゲ哲学の最新像』、双書 現代哲学 5、勁草書房、2007年
- 同上 「第40回大会 (2007年) ワークショップ記録 IV 双対性から論理と計算を捉え直す −領域理論、量子計算から相互作用の幾何まで」、『科学哲学』、41-1号、2008年
- 矢田部俊介、「包括原理のある集合論と超準的自然数」、坪井明人 研究代表、『自然数の超準モデルにおける1階定義可能性の研究』、RIMS研究集会報告集 2005年9月12日〜9月15日、数理解析研究所講究録 1469、京都大学数理解析研究所、2006年2月
- V. N. Grišin “Predicate and Set-Theoretic Calculi Based on Logic without Contractions,” in: Mathematics of the USSR-Izvestija, vol. 18, no. 1, 1982
- 照井一成 「素朴集合論とコントラクション」、『科学哲学』、36巻、2号、2003年
- 津留竜馬 「概念記法は何故矛盾したのか」、『思想』、岩波書店、no. 954、2003年10月号
- J. Roger Hindley and Jonathan P. Seldin “Chapter 17 Logic Based on Combinators,” in their Introduction to Combinators and λ-Calculus, Cambridge University Press, London Mathematical Society Student Texts, vol. 1, 1986
- Peter Aczel “Frege Structures and the Notions of Proposition, Truth and Set,” in Jon Barwise, H. Jerome Keisler, Kenneth Kunen ed., The Kleene Symposium: Proceedings of the Symposium Held June 18-24, 1978 at Madison, Wisconsin, U.S.A., North-Holland Publishing Company, Studies in Logic and the Foundations of Mathematics, vol. 101, 1980, 抄訳 ピーター・アクゼル、「フレーゲ構造と命題、真理、集合の概念」、土谷岳士訳・解説、岡本賢吾、金子洋之編、『フレーゲ哲学の最新像』、双書 現代哲学 5、勁草書房、2007年
これらの文献は皆つながっています。いずれも私にとっては極めて興味深く、重要だと感じられます。また、単に重要なだけでなく、重大だ、と感じられます。個人的にはここに新たな地殻変動が生じていると思われます。特に岡本先生の文献には、それ以外の文献には見られない新しい着想や方向性が示されているように感じられます。実にわくわくします。まだわからないところもたくさんありますので、今後も上記の皆さんの文献をひも解いて、勉強させていただければと思います。
*1:但し、何といっても一番興味深く感じられるのは、毎年のことだが、Fregeの書いたものです。しかしそれは毎年のことなので、以下では彼の文献はあえて掲げることは致しません。