入手文献

  • Christopher Pincock  “Carnap's Logical Structure of the World,” for submission to Philosophy Compass, March 2009


この survey 論文では、Carnap's Logical Structure of the World の解釈史を概観している。
まず従来からの Goodman and Quine による解釈をまとめ, 続いて近年有力な Friedman and Richardson の解釈を提示し、 その後、より最近の Pincock and Carus の解釈を記述、最後に直近の Leitgeb による解釈を紹介している。

これらのことについて、私は当日記で言及したことがある。
それを以下に再録しておく*1

Four Interpretations of Carnap's Aufbau

  • Christopher Pincock  “A Reserved Reading of Carnap's Aufbau,” in: Pacific Philosophical Quarterly, vol. 86, 2005, preprint version.

を拾い読む。そこからCarnapのAufbauの全体的性格・目標に関し、四つの読み・立場がありうることがわかるので、その四つの立場をここにメモしておく*2 *3

    • Empirical Carnap CarnapがAufbauでやろうとしているのは、empiricismの立場に立った認識論の基礎付けである。したがってCarnapのAufbauはempiricismに属する。主唱者 Quine。
    • Neo-Kantian Carnap CarnapがAufbauでやろうとしているのは、主観がいかに客観を捉えるのかを明らかにしようとする認識論である。これは当時のNeo-Kantianism、とりわけMarburg SchoolのNeo-Kantianismに影響を受けている試みである。主唱者M. Friedman, A. Richardson。
    • Reserved Carnap CarnapがAufbauでやろうとしているのは、empiricismでもNeo-Kantianismでもない。様々な科学を新たな科学で置き換えることである。これは言ってみれば認識論の科学化であり、自然主義の試みである。このようなCarnapに影響を与えたのはRussellである。主唱者 C. Pincock。
    • Husserlian Carnap CarnapがAufbauでやろうとしているのは、志向的対象に超越論的主観性がいみを付与する様を論理学を使って描き出す、一種の現象学の試みである。これにはHusserlの影響がある。主唱者 J. M. Roy, G. Haddock, T. Ryckman, P. Przywara*4


上の四つのうち、Quineanなempirical Carnapが従来からの通説(received view)である。

ここにNeo-KantianなCarnap説が現われ、「いやいや、そうじゃない」とReservedなCarnapとHusserlianなCarnapが出てきて、四者入り乱れている状態である*5

これら四者のうち、いずれが正しいのか、あるいははたまた第五の立場がありうるのか、それはちゃんとAufbauを読んでみなければわからない…。

*1:2008年2月6日の日記

*2:四つ目のHusserlian Carnapについては、Pincock論文では触れられていない。

*3:なお、私自身は誠に不勉強なことに、CarnapのAufbauをドイツ語でも英語でも読んだことがない。ので、以下の記述は単なる傍観者的なメモにすぎない。そうは言っても遠くからにしろ見ようともしないよりかは、いくらかましだろうと思いたいのだが…。

*4:今回の再録で、P. Przywara さんの名をここに追記しておく。

*5:なお、これら各四者の特徴付けは、Aufbauをチャート式に理解するために、簡略化したものである。詳細は各論者の論考に当たる必要がある。