Jena, 1908年7月31日

ささいなことを一つ。


以下の論文に面白いものが載っている。

  • Gottfried Gabriel, Karlheinz Hülser, and Sven Schlotter  “Zur Miete bei Frege – Rudolf Hirzel und die Rezeption der stoischen Logik und Semantik in Jena,” in: History and Philosophy of Logic, vol. 30, no. 4, 2009


この論文の冒頭に一枚の写真がある*1。Jena 大学350年記念祭の模様を写した写真である。 大学の大講堂の演壇が写っている。大きなひな壇に多数の教授先生方が正装をして座っている。
そして論文末尾近くに、この写真の一部を引き伸ばしたものが掲載されている*2。そこに一人の人物の姿が写っている。どこか見覚えのある容貌だ。例えば source book の From Frege to Gödel などで見ることのできる姿に似ている。そう、Frege だ。ぼんやりとした姿だが、額上部が薄く、白いあごひげを長く伸ばしているところなどは我々がよく知る彼の様子をよく表している。
この写真の彼の姿を見ると、私には彼が若干驚いたような表情をしているように感じられる。ぼんやりとした写真写りなので、正確な表情はわからない。たぶん驚いているように見えるだけで、本当はそうではないのだろう。ただ、私には最初に一瞥した時、彼が軽く驚いているような、そんな表情に見えた。
いずれにせよ、これは初めて見る写真だ。Frege の何気ない表情を捉えているという点で、生き生きとしたものが感じられる。Nobel Prize を受賞した先生を目の前にしているような、そんな気がしてくる写真である。演壇と観客席にいる多くの人々はあまり気が付いていないかもしれないが、この人物が論理学や哲学に革命を起こしたのだなと思うと、感嘆と畏敬の念を禁じえない。
珍しいものを見させてもらった。こういう写真があるのですね。またあればどんどん発掘してほしい。

*1:Gabriel et al., p. 369.

*2:Ibid., p. 386.