Didn't A. N. Whitehead Write the Second Edition of Principia Mathematica?

些細なことを一つ。


Principia Mathematica について論じる際に、その執筆者として言及されるのは Russell であることが多く、Whitehead はあまり論及されないように見受けられます。元々 Principia は Russell の Principles of Mathematics の vol. 2 として考えられたものが発展したものであり、Principia の哲学的な側面は主に Russell が書いたらしいので、Principia の哲学的な事柄を論じる際に Russell のみに言及して Whitehead に言及しないで済ますということは、ある程度、理のあることだと思われます。
しかしそれにしても言及されるのが Russell 一辺倒でありすぎると感じられますし、Whitehead に言及しないで済ますということを正当化できる文献的裏付けがちゃんとあるのだろうかと、私はいぶかしく思っておりました。Russell 側からこのことを証拠立てる記述が、彼の自伝の類いのどこかに書いてあったのかもしれませんが、それがどこに書いてあったのか、今はちょっと思い出せず、また調べ直すのも面倒なので、放置しておりました。
ところが最近以下のような文献があることを知りました。

  • A. N. Whitehead  “Principia Mathematica. To the Editor of “Mind”,” in: Mind, vol. 35, no. 137, 1926

これは Principia, 2nd ed. について Whitehead が述べた極々短いコメントです。ここに Whitehead 側から、Russell のみに言及し、Whitehead には言及しないで済ますことを正当化する文献的証拠が記されています*1
このコメントの一部を引用してみます*2

The great labour of supervising the second edition of the Principia Mathematica has been solely undertaken by Mr. Bertrand Russell. All the new matter in that edition is due to him, unless it shall be otherwise expressly stated.

なるほど。Principia, 2nd ed. は、もっぱら Russell が取り仕切り、第二版の新しい事柄は、原則 Russell に拠るのですね。
続けて Whitehead は、念のために以下のようにコメントしています*3

[T]he portions in the first edition −also reprinted in the second edition− which correspond to this new matter were due to Mr. Russell, my own share in those parts being confined to discussion and final concurrence.

第二版での新しい事柄に対応する第一版の部分は、これも主として Russell が書いたということみたいです。
原則として第二版の執筆者は Russell であると Principia, 2nd ed. には明記されていないようなので、Whitehead は上記のようなコメントを Mind 誌に寄せたようです。


以上のような文献的証拠から、Principia の、取り分け第二版について論及する場合には、Russell を主として取り上げればよいことが、証拠付けられるという訳ですね。但し、当人たちがそう言っているからといって、そうであるとは限らないので、この辺りについてはきちんと裏を取る必要があると思います。Russell の archive の全貌が明らかになった際には、この辺りのことがわかるようになるのでしょうか? 1st ed. は二人が原稿を読み合い、書き直し合いながらできているようなので、かなりの程度、共同で書かれているみたいですが、それでも Principia の各々の部分について、誰がどれだけリードして書いたのかがわかれば、すごく面白そうですね。


最後に。上の記述に関して誤字・脱字、誤解・無理解が含まれていましたら、お詫び致します。


追記 (2012年9月2日)

次の文献の該当ページには、Principia, 1st ed. と 2nd ed. の Intro. が Russell に負っており、とりわけ 2nd ed. の Intro. は、丸々 Russell が書いたらしいことが、述べられています。

  • Alfred North Whitehead  Process and Reality: An Essay in Cosmology, Corrected ed., David Ray Griffin and Donald W. Sherburne eds., The Free Press/Simon & Schuster, 1978/1985, first published in 1929, Chapter I: Speculative Philosophy, Section III, p. 8, n. 3.

引用しておきます。

3 Cf. Principia Mathemtica, by Bertrand Russell and A. N. Whitehead, Vol. I, Introduction and Introduction to the Second Edition. These introductory discussions are practically due to Russell, and in the second editiion wholly so.

*1:但し、Russell や Whitehead の専門家の方々には周知の文献だろうと思います。

*2:Whitehead, p. 130.

*3:Ibid.