入手文献: Frege and Russell

まず書籍から。

  • Gottlob Frege  Grundgesetze der Arithmetik: Begriffsschriftlich abgeleitet, Band I und II, in moderne Formelnotation transkribiert und mit einem ausführlichen Sachregister versehen von Thomas Müller, Bernhard Schröder und Rainer Stuhlmann-Laeisz, Mentis Verlag, 2009

これは Grundgesetze の Frege 独特の記法を現代の論理式の記法に改めて、ちゃんとした索引を付けた本です。但し、現代の記法に改めてはいるものの、全部が全部、現代的な記法に改まっている訳ではありません。Frege の記法のどの記号にも、現代に対応するものが必ずあるという訳ではないので、さすがにすべてを現代的な記法に書き直すということはできないようです。そのため、本書の中をちらっと覗いてみた限りでは、半分が現代風、半分が Frege 風という印象を個人的には受けました。ですので、この本を見れば Frege の式がどれも完全に現代風になっていて、すらすら読めるという訳ではありません。それでも、かなり読みやすくはなっているような感じです。そしてあちこちでドイツ語本文の言い回しを、この本の転記者たちが言い換えています。例えば対偶を Frege が Wendung と言っているところを Kontraposition というように。そしてしばしば式を box に入れて囲んである行があります。これは box のすぐ上の文を、よりわかりやすい同値文に言い換えているもので、例えば ¬∀x (Φx → Ψx) などを ∃x (Φx ∧ ¬Ψx) へと言い直すような感じで読者が判読しやすいように配慮しています。さらに、巻末にちゃんとした索引を付して読者の利便性を高めています。私は Grundgesetze としては以下の本を持っているのですが、

  • G. Frege  Grundgesetze der Arithmetik I/II, Neuauflage mit Corrigenda von Christian Thiel, Reihe: OLMS Paperbacks, Bd. 32, Hildesheim, Olms, 1998

この本では Band I と II には索引は付いているものの、取り分け II の方の索引は極めて貧弱であり、ほとんど索引の機能を果たし得ないと思われるものです。但し、それというもの、確か II は Frege が、全額だったか一部だったかは忘れましたが、自分でお金を出して出版したものだったはずなので、きちんとした索引を付ける金銭的な余裕がなかったからだとは思います。いずれにしても、Band I und II に付いている索引はとても充分なものとは言えないと感じられます。今回入手した上記の本は、この点の不備を修正しようとされているものと考えられます。この索引は便利かもしれません。


次に論文。すべて Russell の Theory of Descriptions 関係。

  • R. K. Perkins, JR.  “On Russell's Alleged Confusion of Sense and Reference,” in: Analysis, vol. 32, no. 2, 1971
  • Dilip K. Basu  “Russell on Denoting,” in: Analysis, vol. 43, no. 2, 1983
  • Paolo Dau  “The Complex Matter of Denoting,” in: Analysis, vol. 45, no. 4, 1985
  • Francisco A. Rodriguez-Consuegra  “The Origins of Russell's Theory of Descriptions Accoding to the Unpublished Manuscripts,” in: Russell, vol. 9, no. 2, 1989
  • Ditto           “A New Angle on Russell's “Inextricable Tangle” over Meaning and Denotation,” in: Russell, vol. 12, no. 2, 1992

Perkins さんの論文は、2010年3月14日の日記で記した White 論文に対する反論を述べています。
Dau さんの論文は、さらっと見た感じでは、とても重要そうです。多分 the Gray's Elegy Argument を調べている方は必読だろうと思いました。
Rodriguez-Consuegra さんの後者の論文も the Gray's Elegy Argument 関係で、こちらはすべて読んでみました。The Gray's Elegy Argument と関係のある Russell の草稿からの the Gray's Elegy Argument 研究です。論文後半部分が興味深かったです。但し、まだまだ Rodriguez-Consuegra さんの主張に対しては、再検討の余地がありそうに感じられました。しかし、それも無理のないことかもしれません。Rodriguez-Consuegra さんがこの論文を書かれた頃にはまだ the Gray's Elegy Argument と深く関係のある Russell の草稿は未刊であり、Rodriguez-Consuegra さんら、一部の本格的な Russell scholars を除いては、現在では当然必要とされる草稿からの the Gray's Elegy Argument の研究は、ほとんど進んでいなかったでしょうから。(多分ですが、それは今もあまり進んではいないのではないかと個人的には感じています。)