At Last, the Theorems of Arithmetic, Geometry, and Logic Turned Out to be Analytic ...

先日、大学学食で以下の文を読みながら昼食を取る。

Hegel の直接知批判を sense data 批判として汲み取ることにより、共通の Kant-Hegel 的存在論の上に立って、Sellars, McDowell, Brandom, Agamben, Badiou さんたちの哲学が展開されて来ていると論じられているようです。加藤先生のこの文を読んでいて、ちょっと驚いた。その驚いたという文を以下に引用してみます。

カントのアプリオリ論に対する批判で、代表的なものは「アプリオリの総合判断は存在しない」という反論である。カントは「アプリオリの総合判断が存在する」理由として、算術、幾何学の定理が総合判断であること、論理学の判断の分類表は永久不変であることなどの証拠を示したが、十九世紀から二十世紀の論理学研究によって、カントの出した証拠は成立しないことが明らかになった。「算術、幾何学、論理学の定理は、アプリオリの総合判断であって、永久不変の真理である」という論拠が崩れて、それらは分析判断であることが明らかになった。*1

この文の後で加藤先生は、「それらは分析判断であることが明らかになったが、すぐにそれは間違いであることが判明した」などと、上記引用文の内容について、否定したり、疑念を表明したりは、されておられません。

私は不勉強で、能力も足りないので、よく知らないのですが、誰か、算術、幾何学、論理学の定理が、分析判断であることを立証することに成功した人がいたのだろうか? いつ、どこで、誰が、このことを立証することに成功したのだろう? 論理学や算術のみならず、幾何学の真理までをも分析的と立証することに成功した人とは一体誰だっただろう?

Frege は Russell Paradox によって失敗してしまったし、logical positivists は Quine によって反証されたと見なされている、Russell は論理的真理を分析的とは見なしておらず、それを総合的と見なしていたようだし…*2。論理学や数学の真理が分析的であると主張するのは、通常は論理主義者だろうから、今述べた以外の論理主義者で、算術、幾何学、論理学の定理が、分析判断であることを立証することに成功した人がいたのだったかな? Dedekind? 一時期の Hilbert? Tractarian Logicist としての Wittgenstein? Peano, Cantor, Schröder も論理主義を支持するような発言をしていたらしいので*3、彼らのうちの誰かが件の真理を分析的と立証し切ってみせていたのだろうか? 私にはわからないし、思い出せないです*4

あるいはつい最近になってとうとう Neo-Fregean が自身の programme を成功させたのだろうか? 現在、分析性の概念の再評価が進んでいるようですので*5、ごく近年に、算術、幾何学、論理学の定理が、分析的であることを立証した人が現れたとしても、おかしくはありません。なので、もしも加藤先生が、このような人の存在をご存知で、それをもとに上記引用文中のような発言をされているとしましたら、ぜひ、算術、幾何学、論理学の定理が、分析的であることを立証したその人の名前を記しておいてほしかったです。これは本当に重要なことなので。

とはいえ以上の点に関し、私が何か理解し損ねているのかもしれません。よくわかっていないのだろうと思います。あるいは、記憶が抜けているのかもしれません。それとも最近もしくはかつて、算術や論理学や幾何学が分析的であることをきちんと立証した人がいて、やはり私が知らないだけなのかもしれません。そうでしたらすみません。謝ります。申し訳ございません。そして勉強に精進致します。
(以上の記述はよく見直していないので、誤字・脱字等がございましたら、お詫び致します。)

*1:加藤、32ページ。

*2:次を参照下さい。中川大、「論理的真理は総合的か −ラッセルの論理主義−」、『思想』、岩波書店、no. 987、2006年。

*3:野本和幸、『フレーゲ入門 生涯と哲学の形成』、双書エニグマ勁草書房、2003年、14ページ。但し次の文献では Peano は logicist ではないという論が展開されています。D. A. Gillies, Frege, Dedekind, and Peano on the Foundations of Arithmetic, Van Gorcum, Methodology and Science Foundation, no. 2, 1982, pp. 66-70.

*4:いつ、どこで、誰が、算術、幾何学、論理学の定理を分析判断であると立証してみせたのかについて、加藤先生は特に出典を記しておられません。PR 誌に載せた文なので、細かいところは省いておられるのだと思います。

*5:Cf. Cory Juhl and Eric Loomis, Analyticity, Routledge, New Problems of Philosophy Series, 2009, Chapter 6, Analyticity Repositioned.