vitgen∫tain or witgen∫tain?

まったく些細なことを一つ。
不勉強なことに私はまったく知らなかったのですが、購入したばかりの

の、訳者あとがきを読むと、‘Wittgenstein’は、Austria, South Germany では‘W’を濁らずに発音するのだそうで、Ludwig 自身も濁らずに発音していたと書いてある。Ludwig がドイツ語圏の出自であることを明確にしたい場合には、日本語で表す際に、濁って発音・表記し、イギリスで活躍したことを前面に出したい場合には、濁らずに発音・表記すればよいだろうというぐらいにしか、私は思っていなかった。その訳者あとがきを引用しておきます。

翻訳にあたり、ドイツ語圏の固有名詞の表記は、基本的に標準ドイツ語の発音にならっている。ただし本書の主役である「ウィトゲンシュタイン(Wittgenstein)」の姓に関しては、標準ドイツ語では「ヴィ」と濁るところを、濁らせずに「ウィ」と表記した。これはオーストリアも含めた南ドイツの方言では「w」が濁らないためであり、ルートウィヒ・ウィトゲンシュタインも自身の姓を「ウィ」と発音していたと聞いたためである。[…] 同じ理由から、名前の「ルートウィヒ(Ludwig)」も「ウィ」で表記した。*1

Ludwig は、Wien でも Cambridge でも自身の姓名を濁らずに発音していたのだろうか。伝記のどこかにこの種のことが書いてあるのだろうか。伝記はあちこち拾い読みしただけなので、よく知らない。

ちなみに

  • Thomas Mautner ed.  The Penguin Dictionary of Philosophy, 2nd ed., Penguin Books, Penguin Reference Books Series, 2005 (First Edition Published in 1996)

では、難読の固有名に発音記号が振られているのだが、この辞典で‘Wittgenstein’という項目を引くと、‘vitgen∫tain’と、濁って発音するよう記されている。*2

*1:訳書、409ページ。

*2:この辞典では‘vitgen∫tain’の‘e’は、逆さまの‘e’で表記されているが、そのような font でこの日記を書くと文字化けするので、‘e’で代用している。