• Paolo Mancosu  The Adventure of Reason: Interplay Between Philosophy of Mathematics and Mathematical Logic, 1900-1940, Oxford University Press, 2010
  • 指昭博  『イギリス発見の旅 学者と女性と観光客』、世界史の鏡シリーズ D 情報 第6巻、刀水書房、2010年
  • 中山康樹  『ビル・エヴァンスについてのいくつかの事柄 改訂版』、河出書房新社、2010年
  • 安井稔  『納得のゆく英文解釈』、開拓社叢書 1、開拓社、1995年

1本目は Mancosu さんの論文集。なかなか浩瀚な書です。全体は五つの part に分かれていて、各 part には、その summary と文献情報の追加が付されており、単に既刊の論文を束ねただけという本とは異なっています。特に貴重なのは、この本を構成している二つの chapters で、それらは未刊行の文献であり、そのうちの一つは、Tarski の未刊であった、講義のタイプ原稿(を今回の本の印刷用に reset したもの)で、この講義は1940年1月に Harvard で行われたそうである。現在この原稿は U.C. Berkeley の Tarski 文庫にあるみたいだ。この講義原稿はこの本で初めて印刷され世に出たことになる。もう一つの未刊の文献とは、この Tarski の講義原稿を解説した Mancosu さんの文章です。いずれも貴重だと思われます。加えて、先に述べたように、この本では文献に関する追加情報が補足されていますが、それを見ていると、Italy で出ている文献の情報がいくつか載っており、Italy で出たイタリア語や英語で書かれた文献の情報までは、目配りできていなかった私ですので、この追加文献情報も、私にとっては重宝しそうな感じです*1。なお、この Mancosu さんの本を構成する諸論文の中では、私は今までに数本しか読んだことがありません。それらを読んだ時には、「面白かった、とてもためになった」という印象を持ちました。まだ読んでいない論文もためになるでしょうからそのうち読みたいです。きっと勉強になると思います。*2
2本目は、全くの好奇心から購入。近世・近代のイギリスにおいて、様々な理由からイギリス国内を旅した人々の様子が、肩の力を抜いた筆致で描かれています。地図を作るために旅して回った人、一種の観光として England 全州を回った女性、理想の、picturesque な風景を求めて旅した人々などが、写真を多数織り込みながら記されています。元々、(専門誌ではありますが) 雑誌の連載記事を下地にして書かれているので、堅苦しくない書き方になっており、ページ数も多くないので、空いた時間を見つけ、気楽な気分でのんびり拝見させてもらおうかと思っています。
3つ目は2005年に出た本の改訂版。どこがどう改訂されているのか、前書きや後書きの類いには全く記されていないように見える。だからどれほどの改訂が施されているのかはよくわからないが、それでも取り合えず購入させていただきました。
4つ目はしばらく前に出た本。書店で見かけたら購入しようと思っていた。前半は理論的なお話。後半は英文解釈の問題集といった趣き。前半と後半は元々別々の目的で書かれているようなので、それほど強い結び付きはない様子。この種の英文解釈の参考書は好きなので、購入させてもらいました。そのうち勉強できればいいと思います。


PS

以下の論文を先日大体最後まで読んで、再び頭に戻って読み直している。

  • Peter Sullivan  “Dummett’s Frege,” in Tom Ricketts and Michael Potter ed.  The Cambridge Companion to Frege, Cambridge University Press, Cambridge Companions to Philosophy Series, 2010

今回は、所々書き込みを入れながら読んでいます。読んでいて、内容は別にして、Sullivan さんの書き方は少し特徴があるというか、癖があるというか、若干読みにくい。この人は代名詞を多用する気がします。言語内前方照応型の代名詞です。つまり、前の方に出てきた言葉を指す代名詞を頻繁に使うところがあると思う。私自身の英語の力が不足しているせいで、時々それらの代名詞が、正確に言って、どの言葉を指しているのか、その文章の前の辺りを読み直さないとわからないことがちょくちょくあります。どの言葉を指しているのか一意的に決まらない、多義的とも思える代名詞も見かけ、軽い当惑を覚えることもありますが、まぁ、この程度は許容範囲かもしれない。前後の文脈から即座に判断できない、英語の力の欠けた私の方がずっと悪いのだと思う。引き続き修行に励みます。

*1:Italy の文献が紹介されているのは、確か Mancosu さんが Italy 出身だったからだと思います。

*2:因みに、どうでもよいことですが、この Mancosu さんの論文集の title を日本語に訳す場合には、遊び心を効かせてみた場合には、村上春樹さん風に『理性をめぐる冒険: 数学の哲学と数学的論理学のインタープレイ 1900-1940』というのはどうだろうか、などと考えてみたりしました。「理性をめぐる冒険」の部分が『羊〜』であり、「数学の哲学と数学的論理学のインタープレイ」の部分が『世界〜』をもじっています。まぁ、どうでもいいですけど…。なお、Mancosu さんの論文集の title は、O. Becker から D. Mahnke へ送られた書簡に由来があるようです。