Was Frege the First to Take 0 as a Natural Number?

ちょっとしたことを記します。

足立先生のこの論考では、ちょっとしたことですが、私には意外に感じられることが書かれています。
Peano の公理が Peano 本人によって提示されていることはもとより、この公理が少なくとも Dedekind に始まることは、よく知られていると思います。また 0 を自然数に含めるか否かは定義の問題であるから、0 が自然数であるかどうかは、どちらでもよいということも、よく知られていると思います。 この後者の件に関して、

デデキントもペアノも自然数は 1 から始まるものとしている。*1

と足立先生は記しておられ、そのすぐ後に次のように続けておられます。

史上最初に 0 を自然数とした人はフレーゲではないだろうか。*2

これはちょっと私には意外です。Frege 以前の誰かが既に 0 を自然数として扱っているものとばかり思っていましたが、足立先生の推測によると、Frege が最初かもしれないとのことです。小さなことですが、これは何だか意外です。


試しに、手の届くところにあった次の本を開いてみると、

  • D. A. Gillies  Frege, Dedekind, and Peano on the Foundations of Arithmetic, Van Gorcum, Methodology and Science Foundation, no. 2, 1982

Natural number N について

We can write:

  N = the set of natural numbers = { 0, 1, 2, 3, …, n, … }

Here I take the natural numbers as beginning with 0, as Frege does. One can, alternatively, take the natural numbers as beginning with 1, and write:

  N = { 1, 2, 3, …, n, … }

This is the convention adopted by Dedekind and Peano.*3

と書かれています。他の文献でも似たような記述が見られます。自然数として、0 を採るか否かに関し、Frege と Dedekind and Peano の間で相違があったことは、よく知られていることなのかもしれません。Frege が 0 を自然数として採った最初の人物かもしれないという足立先生のお話は、小さなことであるけれど、意外な気がしました。今後は先生のこの推測が本当であるかどうか、何かの機会に確認できればと思います。因みに、0 を自然数として採るべきかどうかに関する Frege 自身の考えに関しては、彼の Grundlagen の §44 の後半部分が、何か参考になるかもしれません。この section で、Frege は 0 と 1 について、それぞれ特徴のある数ではあるが、ことさらそれらを 2, 3, 4, …, に比べて特別扱いすべきではないとの主旨の話をしています。

*1:足立、2ページ。

*2:同上。

*3:Gillies, p. 2.