まずは論文など。

  • Peter Simons  ''Essay Review: Discovering Leśniewski: Stanisław Leśniewski, Collected Works, Edited by Stanisław J. Surma, Jan T. Srzednicki and D.I. Barnett, with an annotated bibliography by V. Frederick Rickey,'' in: History and Philosophy of Logic, vol. 15, no. 2, 1994
  • Frederick Kroon  ''Existence in the Theory of Definite Descriptions,'' in: The Journal of Philosophy, vol. 106, no. 7, 2009
  • Wolfgang Mann and Achille C. Varzi  ''Foreword,'' in: The Journal of Philosophy, Special Issue: Parts and Wholes, vol. 103, no. 12, 2006
  • Peter Simons  ''Real Wholes, Real Parts: Mereology without Algebra,'' in: The Journal of Philosophy, Special Issue: Parts and Wholes, vol. 103, no. 12, 2006


Simons さんの Essay Review は興味深いので、早速全部読みました。前半は Leśniewski の業績をまとめ、後半では Collected Works の看過すべからざる誤植の指摘、及び Collected Works に付された Bibliography に対する不満を述べておられます。その不満な点とは、1992年に出版された Collected Works に、1978年までの文献名しか記載されていない、古くなってあまり役に立たなくなった Biblio. が掲載されているというところです*1。この Biblio. を作成したのは V. Frederick Rickey さんなのですが、Rickey さんとしては、1976年段階で、完全に包括的な Biblio. を作り、編集者にそれを渡し、1978年に若干 update した typescript が最終的に用意されたようなのですが、本の出版がどんどん延びて行き、その間も編集者から何の指示もなかったようで、出版が延び延びになった果てに「間もなく刊行です」との連絡もなく黙って出版され、出た後も献本の一冊もなかったそうです*2。このような不満足な状態に対し、問題は編者にあると Simons さんは編者を責めておられます。ただ、確かに編者にその責任はあるのでしょうが、この Collected Works の出版には非常な困難が伴っていたようで、通常の出版とは訳が違い、単純に編者を責めるだけでは済まないようではあります。(元々は西側の Reidel と東側の Polish Scientific Publishers が合同で1978年に出版することになっていて、最終的な責任は東側の Polish Scientific Publishers にあったようです。そこで出版に当たり、Leśniewski 特有の論理記号を東側でどのように印刷するかで大きな問題となり、東側にはそのような活字はなかったので、西側に活字を注文しようとしたのですが、東側の官僚主義的な規制によりそれができず、いくらかの人々が尽力したのですが、それもかなわず出版が頓挫してしまったらしいです。しかしその後 (ベルリンの壁が崩壊した後?) 編者が出版に再挑戦し、ようやく1992年に刊行の運びとなったみたいです。この丸カッコ内の情報は、Jan Wolenski, ''Review of S. Lesniewski, Collected Works, Vols. I-II,'' in: Modern Logic, vol. 8, no. 3-4, 2000 の冒頭の記述を参考に書いています。) という訳で、結局誰が悪いのかよくわかりませんが、Collected Works が不完全であることは、いずれにせよちょっと残念です。


次に古書。いずれも古書祭りで入手。

  • D. F. ピアーズ、G. ライル、P. F. ストローソン他  『形而上学の本性 その哲学的分析』、BBC分析哲学」連続講演集 (2), 福鎌達夫訳、関書院、1958年 (古書)
  • G. C. リヒテンベルク  『リヒテンベルク先生の控え帖』、池内紀編訳、平凡社ライブラリー 156, 平凡社、1996年 (古書)
  • 現代思想』、特集 丸山眞男青土社、1994年1月号、vol. 22, no. 1 (古書)
  • ロバート・ゴードン  『ジャズ・ウェスト・コースト 50年代 LA のジャズ・シーン』、上田篤、後藤誠訳、JICC出版局、1991年 (古書)


形而上学の本性』は、今まで全く知りませんでした。このような本が出ていたのですね。次の本の

  • D.F. Pears ed.  The Nature of Metaphysics, Macmillan, 1957

ゲラ刷りを訳したのが、今回の『形而上学の本性』のようです。保存状態も悪くないし、安価であり、珍しいので購入しました。有名な人が多数出てきます。目次を一部簡略化して掲げます。この目次には誤植がいくつか見られますが、こちらで訂正して記します。

1. 形而上学  H. P. Grice, D. F. Pears, P. F. Strawson
2. 形而上学の体系  S. N. Hampshire
3. 形而上学の議論  B. A. O. Williams
4. 科学と形而上学  G. Bucdahl
5. 形而上学と歴史  P. L. Gardiner
6. 形而上学倫理学  I. Murdoch
7. 形而上学についての論評  G. J. Warnock
8. むすびの討論  G. Ryle, M. Warnock, A. M. Quinton

Iris Murdoch の哲学評論が和訳で読めるというのは、珍しいのでしょうか。私自身は Murdoch さんの書かれたものを、小説にしろ何にしろ、まだ全然読んだことがないです。Murdoch さんは Wittgenstein の講義に出ていたと、どこかで読んだので*3、彼女と Wittgenstein との関係などに興味を覚えます。

現代思想』、丸山眞男特集号は、以前に所有していたのですが、何故かなくなっていたので、今回古書祭りで見かけ、再購入しておきました。

『ジャズ・ウェスト・コースト』は、前に現物を図書館で見たことがある。一部 copy もして読んでいた。しかしその copy も恐らくどこかへ消えてしまっていると思われるので、古書で見つけて購入しました。

*1:実際に私の方で Collected WorksBiblio. に一通り眼を通してみると、少なくとも1978年の文献まで記載されているのが確認できました。

*2:Simons, p. 234. なお、最近の話ですが、英語で書いてヨーロッパの出版社から専門書を出された先生に話を伺ったところ、私はちょっとよく覚えていないのですが、献本と言ってもそんなに貰えないか、あるいはまったく貰えないみたいです。出版社にもよるでしょうし、出版契約の内容にもよるのでしょうが、先生から伺った話に関し、私の記憶が間違いなければ、そんなに大々的に献本が貰えるものではないようです。少なくとも、出版前に現物が1冊だけでも送られてくる、ということは全然ないみたいでした。ですから献本が Rickey さんのように全くないというのも、割とよくある話なのかもしれません。

*3:多分ですが、次の本を拾い読みしていて教えられたのだと思います。Priscilla Martin and Anne Rowe, Iris Murdoch: A Literary Life, Palgrave Macmillan, Literary Lives Series, 2010. 今手元にこの本がないので、正確なところは確認できていません。