個人的に興味深い Frege の発言を見かけたので、ここに記しておきます。なお、今回のこの日記項目には、おちや結論はございません。おちや結論をあえて付け加えてもよいのですが、その場合、かなり個人的な結論となりそうで、いいかげんにすぎるから、やめておきます。おちや結論は、以下の引用文を読まれた方が、各々お考えいただければと存じます。
Ich hoffe in dieser Schrift wahrscheinlich gemacht zu haben, dass die arithmetischen Gesetze analytische Urtheile [sic]*1 und folglich a priori sind. Demnach würde die Arithmetik nur eine weiter ausgebildete Logik, jeder arithmetische Satz ein logisches Gesetz, jedoch ein abgeleitetes sein. Die Anwendungen der Arithmetik zur Naturerklärung wären logische Bearbeitungen von beobachteten Thatsachen; Rechnen wäre Schlussfolgern. *2
私は本書において、算術法則が分析判断であり、よってアプリオリだということを確からしくしたものと期待している。この通りだとすれば、算術は論理学の一層発展した姿にすぎず、各々の算術命題は派生的ではあるが、論理法則であることになろう。自然の説明に対してなされる算術の応用とは、観察された事実の論理的な加工処理であり、計算するとは推論することだろう。*3
私にとって、特に注目すべき発言は、'Rechnen wäre Schlussfolgern' です。個人的にはこれを「計算するとは演繹することであろう」と訳したい。これを短くつづめれば「計算とは演繹である」となり、少し長くすると「計算するとは、(古典論理において)演繹することである」となると思います。このことがいかなる含みを持つかは、ここでは述べません。大して述べることのできるような考えを私は持ち合わせていませんし、そんな状態であえて述べてしまうと、全く不正確で責任を欠く行為となりそうですので、やめておきます。
誤解や無理解や、誤字、脱字があればすみません。
おやすみなさい。
*1:ここでのように 'Urtheile' としている版もあれば、'Urteile' としている版もある。Reclam では後者を採用している。この語についてはここでは触らずに、そのままとしておきます。
*2:Gottlob Frege, Grundlagen der Arithmetik, Centenarausgabe mit ergänzenden Texten kritisch herausgegeben von Christian Thiel, Felix Meiner Verlag, 1986, §87, SS. 91-92.
*3:G. フレーゲ、『算術の基礎』、野本和幸、土屋俊編、フレーゲ著作集 第2巻、勁草書房、2001年、§87, 150ページ。