The Longer Single Axiom of Leśniewski's Ontology Comes from the Contextual Definition of the Definite Article of Russell's Theory of Descriptions. In Particular, its Axiom Comes from the Definition in Russell's Introduction to Mathematical Philosophy.

Leśniewski の Ontology の、最初に発見された longer version の単一公理 (AO) が、Russell の記述の理論における定冠詞の文脈的な定義式の一例とそっくりであるということを、ここで記してみたい。このことは、既に専門家の先生方にはよく知られています*1。そのため、以下に記すことに目新しいことは一切含まれていません。ただ、個人的な memo として書き付けておきます。
まず、参考にする Leśniewski の文献情報を掲げます。

  • Stanisław Leśniewski  ''On the Foundations of Ontology,'' translated by M. P. O'Neil, in S. J. Surma, J. T. Srzednicki, D. I. Barnett ed., with an Annotated Bibliography by V. Frederick Rickey, S. Leśniewski Collected Works, Volume II, PWN-Polish Scientific Publishers and Kluwer Academic Publishers, Nijhoff International Philosophy Series, vol. 44, 1992, p. 609. This paper was first published in 1930.

この論文の p. 606 に、Leśniewski による Ontology の、最初に発見された longer version の単一公理が挙げられています。次がそれです。

    • (A, a) : : ε{Aa} .≡ ∴ ~( (B).~(ε{BA}) ) ∴ (B, C) : ε{BA}.ε{CA} .⊃. ε{BC} ∴ (B) : ε{BA} .⊃. ε{Ba}

さて、この式の Whitehead and Russell による dot 記法などを、カッコ '( )' や連言記号 '∧' を使って、より現代風に書き直せば次の通り。

    • AO  ∀A∀a ( ( A ε a ) ≡ ( ~∀B ~( B ε A ) ∧ ∀B∀C ( ( ( B ε A ) ∧ ( C ε A ) ) ⊃ ( B ε C ) ) ∧ ∀B ( ( B ε A ) ⊃ ( B ε a ) ) ) )

この長い式は、カッコが多く、瞬時には全体の構造が把握しがたいかもしれないが、その構造は、次の通り。
まず、左端にある '∀A∀a' が式全体を包んでいます。つまり、

    • ∀A∀a (         )

という感じ。次に、このカッコ内の式

    • ( A ε a ) ≡ ( ~∀B ~( B ε A ) ∧ ∀B∀C ( ( ( B ε A ) ∧ ( C ε A ) ) ⊃ ( B ε C ) ) ∧ ∀B ( ( B ε A ) ⊃ ( B ε a ) ) )

では、同値記号 '≡' が main の結合子となっており、この結合子の左辺

    • A ε a

と右辺

    • ~∀B ~( B ε A ) ∧ ∀B∀C ( ( ( B ε A ) ∧ ( C ε A ) ) ⊃ ( B ε C ) ) ∧ ∀B ( ( B ε A ) ⊃ ( B ε a ) )

が同値だと言っています。この右辺は長い式だが、三つの式が連言記号 '∧' によって結ばれているだけです。その三つの式とは、

    • ~∀B ~( B ε A )
    • ∀B∀C ( ( ( B ε A ) ∧ ( C ε A ) ) ⊃ ( B ε C ) )
    • ∀B ( ( B ε A ) ⊃ ( B ε a ) )

のこと。そこで、元の AO 式のカッコを若干省き、かつカッコの一部を付け直して、AO 式の右辺の各連言肢を少し離して並べてわかりやすく書き直してみると、次の通り。

    • ∀A∀a ( A ε a ) ≡   ~∀B ~( B ε A )  ∧  ∀B∀C [ ( B ε A ∧ C ε A ) ⊃ ( B ε C ) ]  ∧  ∀B [ ( B ε A ) ⊃ ( B ε a ) ]

この式の同値記号のすぐ右にある '~∀B ~' は、B の存在を述べているので、'~∀B ~' を '∃B' として、式を再度書き直すと次の通り。

    • ∀A∀a ( A ε a ) ≡  ∃B ( B ε A )  ∧  ∀B∀C [ ( B ε A ∧ C ε A ) ⊃ ( B ε C ) ]  ∧  ∀B [ ( B ε A ) ⊃ ( B ε a ) ]

そしてこの式の変項を、後の議論のために、便宜的に次のように付け替えます。

A = W, a = S, B = x, C = y,

    • RAO ∀W∀S ( W ε S ) ≡  ∃x ( x ε W )  ∧  ∀x∀y [ ( x ε W ∧ y ε W ) ⊃ ( x ε y ) ]  ∧  ∀x [ ( x ε W ) ⊃ ( x ε S ) ].


さて、Leśniewski は ''On the Foundations of Ontology'' の p. 609 に掲げた AO に註を付し、次のように述べています。

In connection with the content of my axiom, cf. the analysis of the sentence 'the author of Waverly was Scotch' in Russell's Introduction to Mathematical Philosophy, 2nd ed.[sic]*2, London-New York 1920, p. 177. *3

そこで、

  • Bertrand Russell  Introduction to Mathematical Philosophy, London: George Allen & Unwin, LTD., New York: The Macmillan CO., Library of Philosophy Series, First published May 1919, Second edition [sic] April 1920, deposited in the University of St Michael's College in the University of Toronto

の p. 177 を見てみると、次のようにあります*4

Thus the proposition ''the author of Waverley was Scotch,'' for example, involves:


(1)  ''x wrote Waverley'' is not always false;

(2)  ''if x and y wrote Waverley, x and y are identical'' is always true;

(3)  ''if x wrote Waverley, x was Scotch'' is always true.


[…] All these three are implied by ''the author of Waverley was Scotch.'' Conversely, the three together (but no two of them) imply that the author of Waverley was Scotch. *5

今、'Wx' を 'the author x of Waverley,' 'Sx' を 'x was Scotch' とすれば、 'the author of Waverley was Scotch' は 'S( W )' と略記され、上記引用文中の (1) は '∃x ( Wx ),' (2) は '∀x∀y [ ( Wx ∧ Wy ) ⊃ ( x = y ) ],' (3) は '∀x [ ( Wx ) ⊃ ( Sx ) ]' と書けるでしょう。したがって上記引用文中の Russell の分析は、次の式にまとめることができるでしょう。

    • RDD ∀W∀S ( S( W ) ) ≡  ∃x ( Wx )  ∧  ∀x∀y [ ( Wx ∧ Wy ) ⊃ ( x = y ) ]  ∧  ∀x [ ( Wx ) ⊃ ( Sx ) ]

この式と、先の Leśniewski による RAO を並べて書いてみると以下のようになります。

    • RDD ∀W∀S ( S( W ) ) ≡  ∃x ( Wx )  ∧  ∀x∀y [ ( Wx ∧ Wy ) ⊃ ( x = y ) ]  ∧  ∀x [ ( Wx ) ⊃ ( Sx ) ]
    • RAO ∀W∀S ( W ε S ) ≡  ∃x ( x ε W )  ∧  ∀x∀y [ ( x ε W ∧ y ε W ) ⊃ ( x ε y ) ]  ∧  ∀x [ ( x ε W ) ⊃ ( x ε S ) ]

よく似ていますね。両者の間では、何が違うでしょうか?RAO で 'ε' が使われていることが違います。これ以外には、ただ、RDD 内二番目の連言肢中の同一性記号 '=' が、RAO 内では 'ε' に変更されている点だけです。'ε' は英語で言えば be 動詞の 'is' に相当します。英語の 'is' に相当する言葉を論理学上の基本的単位として認め、これを採用・保持した状態で Russell の RDD を Leśniewski 流に書き直し、同一性記号で表されるところを 'ε' に書き換えたのが Leśniewski の RAO, 即ち AO だ、ということです。


しかし、同一性 equality の 'is' を等号 '=' で表さず、述定 predication を表すと見える 'ε' で書き換えてもよいのでしょうか? 上記 RAO 内二番目の連言肢中の 'ε' で同一性が表せるのでしょうか? Leśniewski は、論理的単位としての 'ε' を含む原子式 (atomic formula) の真理条件を与えており、この真理条件を前提すれば、実は上記 RAO 内二番目の連言肢中の 'ε' が同一性を表していることを、簡単に証明することができます。
そこでまず最初に、'ε' を含む原子式の真理条件を以下に説明します。その後、その真理条件を前提として、'ε' を使った同一性の定義を解説します。これらが終わった後で、上記 RAO 内二番目の連言肢中の 'ε' が同一性を表していることを証明します。


最初に 'ε' を含む原子式の真理条件を説明します。

'ε' を含む原子式とは、次のような式のことです。

    • a ε b

この式の真理条件は、次のように与えられます。

'a ε b' (a is b) が真となるのは、次の時、かつその時に限る。すなわち、'a' が単称名 (singular name) として振る舞い、かつ 'b' が単称名として振る舞うか、または 'b' が一般名 (general name) として振る舞っている時 (かつ 'a' も 'b' も架空名 (fictitious name) として振る舞っていない時) である。


すなわち、

a ε b iff ( 'a' は単称名である ∧ ('b' は単称名である ∨ 'b' は一般名である) [∧ 'a' も 'b' も架空名でない] ).


では、単称名、一般名、架空名とは何でしょうか。それらがそれとして振る舞うのはいかなる時でしょうか。それは次の通りです。

名辞 (term) が単称名として振る舞うとは、その名辞がただ一つのもの (object) を名指している (name) ことを言う。
名辞が一般名として振る舞うとは、その名辞が複数のものを名指していることを言う。
名辞が架空名として振る舞うとは、その名辞が何も名指していないことを言う。


'ε' を論理的単位として認めるべきなのか、また、'ε' を含んだ原子式の真理条件は、上記のように与えられるべきなのか、単称名や一般名や架空名の規定は、上記の通りでよいのか、これらのことはよくよく検討されるべき事柄とは思いますが、ここではひとまず置いておきます。


次に、'ε' を使った同一性の規定を解説します。

さて、以上のような 'ε' を含む原子式の真理条件を踏まえると、'ε' と連言記号∧だけで、同一性を表すことができます。'ε' と連言記号∧だけで同一性を表したければ、'a = b' を次のように表記すればよい。即ち、

a = b ⇔df. a ε b ∧ b ε a.


では、なぜ a ε b ∧ b ε a で、a = b となるのでしょうか。その理由は次の通りです。

先ほどの、'a ε b' に関する真理条件の説明を前提します。さてそうすると、'a ε b ∧ b ε a' が真である時、'a ε b' が真でかつ 'b ε a' が真であり、すると、この時、'a' も 'b' も単称名として振る舞っていることになります。そうだとすると、'a ε b' も 'b ε a' も真であるならば、'a' と 'b' はそれぞれ単称名で、かついずれもただ一つのものを名指していることになります。ならば 'a ε b' かつ 'b ε a' だとすると、a も b も同じ一つのもののこととなります。つまり a と b は同一である (a is identical with b) ということになります。したがって、'a ε b ∧ b ε a' により、'a = b' の等号が定義されることになります。


ここまでの、'a ε b' に関する真理条件の説明と、a = b を a ε b ∧ b ε a と定義する理由については、次の二つの文献を参考にしました。

  • Czeslaw Lejewski  ''On Leśniewski's Ontology,'' in: Ratio, vol. 1, no. 2, 1958, pp. 154-59. (和訳では、チェスラウ・レジェウスキー、「レスニェウスキーの存在論について」、石本新、渡辺昌三訳、石本新訳編、『論理思想の革命 理性の分析』、東海大学出版会、1972年、206-12ページ。)
  • Jerzy Slupecki  ''S. Leśniewski's Calculus of Names,'' in Jan T.J. Srzednicki, V.F. Rickey, J. Czelakowski ed., Leśniewski's Systems: Ontology and Mereology, Martinus Nijhoff / Ossolineum, Nijhoff International Philosophy Series, vol. 13, 1984, pp. 91-92. This paper was first published in 1955.


以上で、'ε' を含む原子式の真理条件を説明し、その真理条件を前提として、'ε' を使った同一性の定義を解説しました。これらの事柄を踏まえると、しばらく前に挙げた RAO 内二番目の連言肢中の 'ε' が同一性を表していることが容易に証明できます。その証明を informal な形で以下に書き下してみましょう。その際、引用符はすべて省いて証明を書き下します。


まず、RAO をもう一度、ここに掲げてみます。

    • RAO ∀W∀S ( W ε S ) ≡  ∃x ( x ε W )  ∧  ∀x∀y [ ( x ε W ∧ y ε W ) ⊃ ( x ε y ) ]  ∧  ∀x [ ( x ε W ) ⊃ ( x ε S ) ].

さて、 W と S をそれぞれ a と b で例化すると、次になります。

    • ( a ε b ) ≡  ∃x ( x ε a )  ∧  ∀x∀y [ ( x ε a ∧ y ε a ) ⊃ ( x ε y ) ]  ∧  ∀x [ ( x ε a ) ⊃ ( x ε b ) ].

今、この式の左辺 a ε b を仮定しましょう。するとその右辺が成り立ちます。つまり、

    • ∃x ( x ε a )  ∧  ∀x∀y [ ( x ε a ∧ y ε a ) ⊃ ( x ε y ) ]  ∧  ∀x [ ( x ε a ) ⊃ ( x ε b ) ].

この連言文が成り立つならば、その各連言肢も成り立つので、

    • ∀x∀y [ ( x ε a ∧ y ε a ) ⊃ ( x ε y ) ]  (I)

です。次にこの式の x と y をそれぞれ c と d で例化すると、

    • ( c ε a ∧ d ε a ) ⊃ ( c ε d ).  (II)

ところで (I) の x と y は任意でよかったから、x と y をそれぞれ d と c で例化してもよく、その場合、(I) は次になります。

    • ( d ε a ∧ c ε a ) ⊃ ( d ε c ).  (III)

こうして出てきた (II) と (III) を見ると、その前件は同じ c ε a ∧ d ε a なので、この c ε a ∧ d ε a を仮定すれば、(II) と (III) の後件 c ε d と d ε c が帰結します。すなわち、

    • ( c ε a ∧ d ε a ) ⊃ ( c ε d ∧ d ε c ).  (IV)

さて、この式の後件 c ε d ∧ d ε c を見てみましょう。そして今行っている informal な証明の前に与えた 'ε' を含む式の真理条件と、'ε' を使った同一性の定義を思い出しましょう。そうすると c ε d ∧ d ε c は、c と d の同一性を表していることがわかります。つまり c = d ⇔df. c ε d ∧ d ε c. したがって、上記 (IV) の後件 c ε d ∧ d ε c を c = d に置き代えてもよく、そうすると (IV) は次のようになります。

    • ( c ε a ∧ d ε a ) ⊃ ( c = d ).

ところで、この式の c と d は、元々は普遍例化によってもたらされたものでした。したがって c も d も普遍汎化してよく、それぞれを x と y で汎化してやれば

    • ∀x∀y [ ( x ε a ∧ y ε a ) ⊃ ( x = y ) ]

が得られます。これはすなわち、任意のもの x が a であり、任意のもの y も a であるならば、x は y と同一である、ということを表しています。
ここで行った infromal な証明の、最初に掲げた RAO 内、第二番目の連言肢

    • ∀x∀y [ ( x ε W ∧ y ε W ) ⊃ ( x ε y ) ]

の後件

    • x ε y

は、Russell の

    • RDD ∀W∀S ( S( W ) ) ≡ ∃x ( Wx ) ∧ ∀x∀y [ ( Wx ∧ Wy ) ⊃ ( x = y ) ] ∧ ∀x [ ( Wx ) ⊃ ( Sx ) ]

では

    • x = y

と表されていたのでした。Leśniewski による RAO 内、第二番目の連言肢の後件 x ε y は、そこに同一性記号 = が見えないものの、以上の informal な証明からして、この x ε y も、実際のところは、x = y を表しているということがわかるということです。


振り返ってみましょう。Russell の RDD において、等号 = が使われているところで、Leśniewski の RAO では述定と思しき ε が使われているのでした。そしてこの ε が同一性を表しているのか、同一性を表すことができるのか、それが問題でした。この問題は、 'ε' を含む式の真理条件と、'ε' を使った同一性の定義を前提し、RAO の冠頭にある二つの普遍量化子を共に例化してやった式の、その左辺が成り立つと仮定するならば、肯定的に解かれるということです。


おそらく Leśniewski は、AO を着想するに際し、Russell の Introduction to Mathematical Philosophy, p. 177 を参考にし、そこから得られる RDD を、ε を使い、一般的で統一的な形で表そうとしたのではないかと推測されます。あるいは、'Tully is Cicero', 'Hesperus is Phosphorus' のごとく、日常の英語でしばしば見られるように、同一性をあからさまに等号で表現せず、be 動詞 (に相当する ε ) のみで RDD を表現しようとしたのではないかと推測されます*6。その結果が、AO であったのだろう、ということです。

Leśniewski の Ontology という体系は、しばしばその特異性が言われますが*7、Leśniewski 自身によって最初に発見された、その体系の単一公理 (AO) は、恐らく意外にも、私たちのよく知っている Russell の記述の理論の、定冠詞の文脈的定義を表す一事例に由来し、その事例によく類似しているということです。個人的にはこのことは、私が不勉強なため、とても意外な感じがしたので、ここに記してみました。


以上の説明には、誤解や無理解や勘違い、明らかな間違いが含まれているかもしれません。誤字や脱字なども含まれているかもしれません。きっちり読み返していないので、もしもそれらの不手際がありましたら、ここでお詫びを申し上げます。誠にすみません。どうかご容赦下さい。勉強致します。

*1:例えば次を参照して下さい。藁谷敏晴、「論理的存在論について」、中川純男、田子山和歌子、金子善彦編、『西洋思想における「個」の概念』、慶應義塾大学出版会、2011年、Toshiharu Waragai, ''On Understanding the Axiom of Lesniewski′s Ontology,'' in: 『東京工業大学 人文論叢』、第21号、1995年、藁谷敏晴、「レシニェフスキー存在論ラッセルの記述理論」、『科学基礎論研究』、第20巻、第3号、1991年、Toshiharu Waragai, ''Ontology as a Natural Extension of Predicate Calculus with Identity Equipped with Description,'' in: Annals of the Japan Association for Philosophy of Science, vol. 7, no. 5, 1990. この他に、石本新、「抽象を含むレスニェウスキー存在論について」、石本新編、『自然言語の論理とその存在論』、多賀出版、1990年、15ページ。及び、次も参照。Czeslaw Lejewski, ''A Re-Examination of the Russellian Theory of Descriptions,'' in: Philosophy: The Journal of the Royal Institute of Philosophy, Special Issue: The Philosophy of Bertrand Russell, vol. 35, no. 132, 1960, pp. 14-20.

*2:ここでは、'2nd ed.' と書いてあるが、本来のいみでの 2nd ed. というのは、Introduction to Mathematical Philosophy に関しては、存在しないようです。実際にこの本の奥付に 'Second edition' と印字されている本は存在するが、それは出版社か、あるいは印刷所の誤りで、'Second impression' とすべきところを 'Second edition' としてしまっているようです。See Kenneth Blackwell, ''A Non-Existent Revision of ''Introduction to Mathematical Philosophy'','' in: Russell, Old Series, no. 18, 1975, pp. 16-17.

*3:Leśniewski, p. 609, n. 10.

*4:今記した文献情報中の 'Second edition' という表記については、二つ前の註を参照のこと。

*5:Russell, p. 177.

*6:Polish でも、同一性を表すところで、しばしば be 動詞に相当するものにより代用しているのか、この点については、不勉強なことに私は未確認です。

*7:Leśniewski の Ontology が、現代の標準的な logic と比べて、どの点で特異であるのかは、次の論文が簡潔にそれらの点を list up しています。Peter Simons, ''On Understanding Lesniewski,'' in: History and Philosophy of Logic, vol. 3, no. 2, 1982. この論文では、その Section 1. Lesniewski's Ontology: Interpretative Difficulties の pp. 167-170 において、Ontology の特異さが列挙されています。それぞれを簡潔に記すと次の通りです。1. Ontology という system は極めて唯名論的である。2. Ontology の公理や定理には自由変項が現れず、すべて変項は束縛されている。3. 定義を行う記号は、metalinguistic なものではなく、体系中の同値記号がその役目を果たす。そしていわゆる創造的定義を許す。4. 量化子が存在関与 (existential import, ontological commitment) から自由である。5. 変項への代入に際しては、不完全な表現、部分表現の代入を許さない。6. いわゆる一般名・空名辞が認められる。7. Copula を認める。以上、これらの特異な点について、本当に特異なのか、特異だとしても、どの程度特異なのか、色々と検討すべき事柄が心に浮かんで来ますが、それは別稿で若干記してみたことはあるものの(日記には未掲載)、ここでそのことを論じる暇やスペースがございません。これらの検討課題については、別の機会に譲りたいと思います。