英語図書

  • Gottlob Frege  Basic Laws of Arithmetic, Translated and Edited by Philip A. Ebert and Marcus Rossberg with Crispin Wright, and the Advice of M. Beaney, R. Cook, G. Gabriel, M. Hallett, R. Heck, Jr., R. May, E. Picardi, W. Stirton, C. Thiel and K. Wehmeier, Appendix by Roy T. Cook, Oxford University Press, 2013
  • P. M. S. Hacker  Wittgenstein: Comparisons and Context, Oxford University Press, 2013
  • Sascha Bru, Wolfgang Huemer, Daniel Steuer eds.  Wittgenstein Reading, Walter de Gruyter, On Wittgenstein, vol. 2, 2013
  • Jolen Galaugher  Russell's Philosophy of Logical Analysis, 1897-1905, Palgrave Macmillan, History of Analytic Philosophy Series, 2013
  • Andrew Chapman, Addison Ellis, Robert Hanna, Tyler Hildebrand and Henry W. Pickford  In Defense of Intuitions: A New Rationalist Manifesto, Palgrave Macmillan, 2013

一本目。ようやく Basic Laws of Arithmetic 英訳完全版が出ました。何年も前から翻訳が進められてきたようですが、とうとう刊行されましたことをお祝い申し上げます。間違いなく今年一番の収穫だと思います。まだ読んでいないので、翻訳がよくできているのかどうかは、わかりませんが。きっとよくできているのだと思います。
三本目。Wittgenstein Reading では、Wittgenstein がどのような文学や芸術や人文学一般に影響を受けていたのかを諸家が検討しています。私は以前は Wittgenstein の論理学的な事柄に興味がありましたが、そして今もありますが、彼の考えをもっと全体的に捉えたい、もっと根底的なところから捉えたいと思うようになりました。彼の根底にはたぶん倫理的なことや宗教的なことが深く横たわっているのだろうと推測しています。そのため哲学 proper だけでなく哲学とは少し離れた事柄から Wittgenstein を見てみたいと考えています。そのような私の希望にかなっているのが本書のように思われましたので購入しました。本書で研究者の方々が取り上げているのは、Augustine, Shakespeare, Milton, Lessing, Lichtenberg, Goethe, Nestroy, Franz Grillparzer, Wagner, Wilhelm Busch, Dostoevsky, Ludwig Anzengruber, Tolstoy, Kürnberger, Trakl, Kraus, F. R. Leavis, William Empson などです。このうち私が初めて聞く名前がいくつか上がっているので、ちょっと調べてみると、Franz Grillparzer は Austria の劇作家、Wilhelm Busch はドイツの風刺画家、Ludwig Anzengruber は Austria の劇作家のようです。左記の名前全員のうち、私が個人的に最も興味を抱くのは Tolstoy と Wittgenstein の関係です。Tolstoy は Wittgenstein の宗教観に深い影響を与えたことは一般に知られていますので。あと、意外なのは、Leavis と Empson とが Wittgenstein とどのような関係にあるのだろうか、ということです。何か関係があるのでしょうね、私はよく知らなかったのですが。

ところで最近、次のような文庫版が出ましたが、

この本の404ページに、以下のようなイラストが Wittgenstein によって書き付けられているのを、ご覧になった方もおられると思います。(ただしこの写真は、Wittgenstein Reading の p. 206 から撮りました。)

この絵は Napoleon Bonaparte が描かれており、計算の規則やいわゆる aspect の問題に関する文脈で出てくるのですが、実はこの絵は先ほど上げたドイツの風刺画家の Wilhelm Busch の絵に由来しているそうです*1。Busch が出版した絵の描き方に関する本を Wittgenstein が見て、そこで Napoleon の素描の仕方が示されており、それに基づいて Wittgenstein は上記の講義内で絵を描いているようなのです。Busch の元々の絵とは少し異なっていますが。このような細かいことまで Wittgenstein Reading では究明が行われているようです。


邦語図書

私は Hegel に無知なので、勉強のために購入。いつか読むことができればと思います。

*1:Wittgenstein Reading, pp. 205-207.