洋文献

  • Colin McGinn  Philosophy of Language: The Classics Explained, The MIT Press, 2015

本書は、次の各論者の各文献を、この順番で解説した入門書。

  • G. Frege  ''On Sense and Reference''
  • S. Kripke  Naming and Necessity
  • B. Russell  ''On Denoting''
  • K. Donnellan  ''Reference and Definite Descriptions''
  • D. Kaplan  ''Demonstratives''
  • G. Evans  ''Understanding Demonstratives''
  • H. Putnam  ''Meaning and Reference''
  • A. Tarski  ''The Semantic Conception of Truth and the Foundations of Semantics''
  • D. Davidson  ''Semantics for Natural Languages''
  • P. Grice  ''Meaning''
  • S. Kripke  ''A Puzzle About Belief''

McGinn 先生による大学での講義を録音し、それを文字に起こして書き直したものみたいです。大学で言語哲学の授業を初めて受ける学生を念頭に置いて書かれているようです。上記のように、文献中心の解説は、私の好みですので購入しました。似たような本に、

  • Michael Morris  An Introduction to the Philosophy of Language, Cambridge University Press, Cambridge Introductions to Philosophy Series, 2006

がありました。この本も以前に購入させてもらいました。

本書は Kripke さんの Naming and Necessity が出て以降、reference について、どのように考えればよいのかを研究者の方々が検討した論文集。

編者の次の文を少し見てみると、

  • Andrea Bianchi  ''Introduction: Open Problems on Reference''

この subtitle の open problems, あるいは unfinished agenda が何であるかを簡単に述べておられます。それには大きく三つあるようで、大体のところを私の方でところどころ言い直しつつ記しますと、以下のような感じです(Bianchi, pp. 2-3.)。

    1. Foundational Problems: Kripke さんによると、reference というものは Frege が考えたようなものではないとのことですが、ではどのようなものなのかに関しては、Kripke さんは十分に体系的で包括的な reference の理論を構築していない。そこでそのような reference の体系的な理論を打ち立てるとする場合、どのようなものになるだろうか。
    2. Cognition: Frege のものとは異なる Kripke さんの新たな reference の理論においては、この reference に関する考えと、外界のことを知る私たちの認知に関する理解とを、どのようにすればより合わせ、すり合わせることができるのだろうか。
    3. Semantic Problems: 特定の言語表現、例えば固有名の reference の Kripke 的な理論を、自然言語全体に対して構築される semantic theory の中に、いかにして組み込めばよいのだろうか。Kripke 流の reference の理論では扱いづらいとされている empty names や命題態度文を、どうすればうまく扱えるのか。

今回購入しました On Reference では、各論者は以上の問題に取り組んでいるようです。

  • Jordan Collins  A History of the Theory of Types: Developments after the Second Edition of 'Principia Mathematica,' Lambert Academic Publishing, 2012

Frege, Schröder から Principia Mathematica を通って、1950年代半ばへと至る the Theory of Types の変遷を解説した本。118ページほどの小冊子。著者は the University of Auckland の大学院生の様子。たぶんですが、自費出版みたいな感じの本。全部で9章から成る。その第9章は参考文献の page のため、実質的には8章から成る本。第5章は Tarski と Gödel を扱った章ですが、この章だけ他の章と比べて極端に短いです。たった3ページぐらいしかない。正確には3ページ + 4行しかない。わずか3ページで one chapter というのは、かなり unbalance です。「内容が優れていれば問題ない」と言い切ることができるのかもしれませんが、それにしてもちょっと…, という感じです。なお、この本の目次に出てくる人名は、出てくる順番に上げると、Frege, Schröder, Russell, Weyl, Chwistek, Ramsey, Carnap, Tarski, Gödel, Church, Quine, Turing, J. Richard Buchi, Maurice L'Abbe, Wang, Myhill です(敬称略)。


和文

  • 飯田隆  「三段論法と死」、『思想』、岩波書店、2015年第4号、no. 1092, <http://www.iwanami.co.jp/shiso/1092/kotoba.html>

本屋さんでこの号を手に取ってみましたが、飯田先生のこの論考は、上記の通り、net 上でも閲覧可能です。岩波書店の home page の、「雑誌」の「思想」の項目を click すると、誰でも見ることができるようになっています。そこでその文章を copy させてもらいました。

飯田先生は三段論法を学生に説明する際に、一般に上げられる論証の例


人間はみな、死すべきものである。
ソクラテスは人間だ。
∴ ソクラテスは、死すべきものである。


ではなく、


人間はみな、いつか死ぬ。
私は人間だ。
∴ 私は、いつか死ぬ。


を上げて説明されるようですが、前者の例ではなく、この後者の例を利用する理由を述べておられます。

  • 今井邦彦  『言語理論としての語用論 入門から総論まで』、開拓社 言語・文化選書 50, 開拓社、2015年

語用論に関して、関連性理論、言語行為理論、グライス理論、新グライス派理論、認知言語学の五つの理論の「綿密な紹介」が、本書の第一の目的のようです。さらには、単なる紹介だけではなく、「批判的検討」を行ない、苦言を呈するということを、積極的に行なっているようです。各理論が compact にまとめられているようであり、わかりやすくかつ面白そうでしたので購入させてもらいました。

先入観を排し、新たに自分で考え直し、その結果に対する風圧に屈せず、なおも前進して行くことを、Kant の思考を通して学ぶ本。Kant の三批判書と『永遠平和のために』の中高生向けのやさしい解説書になっているので購入しました。

  • マーク・ピーターセン  『英語の壁 The English Barrier』、文春新書 326, 文藝春秋、2003年

本書は、英語圏での英語の使われ方を紹介し、日本人による英語に対する誤解を提示し、日本語と英語に見られる文化的相違を検討しています。英語の文例をたくさん上げて、そのそれぞれに詳しい文法的解説を加えるという体裁を本書では取っておらず、紙数の多くを日本語が占めていて、そのいみで日本語による読み物という感じです。

これは以前から出ていた有名な伝記ですが、改訳の上、新しく出版されました。改訳に当たっては訳文を「より先鋭的な文章にすることを一義的な目的とした」とされており、「ただし大幅な変更はなく、基本的にはこれまでの訳文を踏襲したものとなっている」ようです。そして今までの版と最も違うところは、これまでの版になかった、原書収録の写真が多数掲載されていることみたいです。