Anecdotes about Austin and Grice

本日は、特に記すことはありませんが、購入したばかりの次の本を見ていると、

  • 今井邦彦  『言語理論としての語用論 入門から総論まで』、開拓社 言語・文化選書 50, 開拓社、2015年、

この本の中にいくつもの小話が「コラム」という題名のもとに、今井先生によって紹介されていて、ちょっと面白かったので、そのうち、哲学に関係してくる楽しい話を少し引用させてもらいます。John L. Austin と Paul Grice に関する逸話です。


まず、Austin から。

 オースティンはオックスフォード大学の哲学科所属であったが、第2次世界大戦の期間は、あの 007, つまりジェームズ・ボンドが属していたということになっているイギリスの諜報機関 MI6 (これは実在の機関) に勤務した。ただし、オースティンがボンドのような派手な活躍をしたというわけではなさそうだ (今井 (監訳) (2014) [『語用論キーターム事典』] 参照。)。*1

私の印象では、Austin 先生は生真面目な方だと思いますので、Bond 張りのことは、たとえできてもしないだろうと推測致します。


次に Grice.

 グライスは、言語行為理論のオースティンよりいくぶん後輩にあたる。オースティンの主宰する土曜ごとの研究会にはグライスも出席していたが、この会を「監督者付き幼児お遊びグループ (playgroup)」と呼んでいたという (ただし、オースティンのいる場所では口にしなかったそうだ)。*2

ここで言われている「監督者」とは誰のことなのだろう? たぶん Austin さんのことなのだろうけれど、そうだとすれば Austin さん以外の、Grice さんを含めた参加者は全員幼児並みということになってしまい、Grice さんは自分で自分を幼児であると認めてしまうことになりますね。そのようなことを認めないためには、監督者は Grice さん本人であるとするか、Grice さんは傍観者として、この group の部外者であると自らを見なすかの、どちらかかもしれません。このうちの前者だとすると、それを知ったら Austin 先生は真剣に怒りそうな気がしますが…。だから、たぶん後者なのでしょう。なお、'playgroup' という言葉を少しだけ調べてみると、この group 活動は、たぶんかなり真面目な活動のようです。単なるおままごとではないみたいです。


短いですが、以上で終ります。


なお、Austin さんの逸話については、今回記したものとは別の逸話をいくつか、この日記でかつて記したことがありました。以下の日付の日記です。

    • 2007年5月13日、'Anecdotes about Isaiah Berlin'
    • 2007年5月15日、'Berlin and Austin.'

ご興味のある方はご覧ください。

*1:今井、『言語理論』、84ページ。

*2:今井、『言語理論』、85ページ。