A Book on Quine: Inquiry into the Relation between Quine's Critique of Quantified Modal Logic and his Epistemology.

先日 Quine さんに関する本を調べていたら、次のような本が出ていることを初めて知りました。

  • Antti Keskinen  Quine's Critique of Modal Logic and his Conception of Objects, Tampere University Press, Acta Universitatis Tamperensis Series, 2010

この本の内容を詳しく知りたいと思い、Tampere University Press を net で調べ、見つかった home page で検索をかけてみると、上記の title が出てきました。そこでその title を click してみると、PDF になっていて、本が全文 down load できました。丸ごとタダで入手でき、保存もできました。あっさり手に入れることができたので、ちょっと意外に思いました。

URL を記しておくと、以下の通りです。(2015年12月27日現在閲覧可。)

    • https://tampub.uta.fi/bitstream/handle/10024/66636/978-951-44-8172-7.pdf?sequence=1

本の中をよく見ると、どうやらこの本は、博士論文の類いのようで、表紙とその裏を見ると、Academic Dissertation, University of Tampere, Department of History and Philosophy, Finland, 2010 となっている。調べてみると University of Tampere は、Helsinki をまっすぐ北に上って行った先の Tampere という街にあるみたいです。ちなみに Tampere のすぐ西には携帯電話で有名な Nokia という街があります。

さて、University of Tampere は、近頃の大学がそうであるように、学内の学位論文を一般に公開しているようで、そのため無料で上記の論文を down load できたみたいです。冊子体がほしい場合は、上記の本を注文する必要があるようです。

この論文の特徴、主張がどういうものであるかは、そこに書かれている abstract の冒頭を見ると明瞭であったので、その部分を引用してみます。

Abstract
In this study, I discuss W.V. Quine's critique of quantified modal logic and 'Aristotelian essentialism' from a novel perspective. The novelty of my approach consists in looking at Quine's critique in the broader context of his philosophical system, especially in the context of his naturalized epistemology. The main thesis of the present study is that Quine's epistemological conception of objects as theoretical posits supports his critique of quantified modal logic. Since neither Quine himself nor his commentators address the connections between his critique and the details of his epistemological model, the present study contributes to a better understanding of Quine's philosophical system by exposing a hitherto undiscovered connection between these two aspects of it.

Quine による様相論理批判は、彼の認識論によって下支えされていると、著者はお考えのようです。対象を理論的措定物と見る Quine の認識論によって、彼の様相論理批判は支えられていると、著者は主張されています。Quine の様相論理批判と、彼の認識論との密接な関係を明らかにした研究は今まで見られなかったようで、この点を明らかにしているところが本論文の、従来からある研究との顕著な違いのようです。この日記でも、時々 Quine の様相論理批判に関して言及していますが*1、確かに Quine の様相論理批判と彼の認識論との関係については、従来はあまり言われてこなかったような印象を受けます*2。だとすると、上記の Keskinen 先生のこの研究は目新しいものかもしれません。ただし、目新しいからといっても、それだけで先生の主張が首尾よく擁護できるかどうかは、また別だと思いますが。

CiNii Books で検索すると、上記の冊子体は国内では所蔵されていないみたいなので、Quine の様相論理批判に関心のある方は、PDF で読んでみてもよいかもしれませんね。

*1:例えば、2011年8月15日、''Quine's Main Criticisms Directed to Quantified Modal Logic'', 2014年11月24日、''How Does Kripke Get Over Quine's Objections to Quantified Modal Logic?: A Rough Outline.'' など。

*2:Aristotelian Essentalism を認識論的観点から批判するということは、Quine によって若干ながら、なされていましたが…。この点に関しては、当日記、2011年8月15日、''Quine's Main Criticisms ... '' を参照ください。なお、Keskinen 先生は単なる認識論的観点からではなく、特に naturalized epistemology の観点からなされる様相論理批判を具体的に明らかにしようとされているのかもしれません。