洋書

  • Ian Ground, F.A. Flowers III eds.  Portraits of Wittgenstein, 2nd ed., 2 vols, Bloomsbury Academic, 2015

この本はなかなかのお値段がしました。福澤さん5人に、夏目さんまたは野口さん5人に集まってもらい、購入しました。皆さんすぐには集まってもらえず、時間をかけて少しずつ集まっていただき、ようやく購入の運びとなりました。私は別に Wittgenstein の研究者ではありませんし、彼の哲学を研究しようというわけでもなく、普段も全然勉強していないのですが、この本が出ると知った時、「これはすごそうな本だ、ぜひほしい」と思ってしまい、後先考えずに福澤さんたちを呼び集めて購入しました。こんなことしていていいのかなと思ってしまいますが…。
さて、この2巻本は、たぶん1999年に Thoemmes から出版された4巻本の改訂拡大版です。Wittgenstein に関わりのあった人々の回想録を、あちらこちらから集めてきてまとめたものです。おそらくですが、この種のものでは最大のものだろうと思われます。全部で89本の回想、伝記的記述を収めています。Russell の文章が複数本収められていたりしますので、89人の回想というわけではありません。また Ray Monk や Brian McGuinness の例の伝記からの抜粋や、Janik と Toulmin の Vienna 本からの抜粋もあるようなので、全部が全部、直接 Wittgenstein に会った人の当時の思い出話というわけでもないようです。しかし、非常に多種多様な、広範囲からの収集が行われているようであり、たぶん珍しい文献も収められていると思われます。そのため、大体 one-stop で済みそうな、大変便利な2巻本になっているみたいです。
今回の第2版では、新たに10本の文献が追加されているようです。そのうちの8本が、第1版刊行後に執筆されたみたいです。そしてその8本のうちの4本が、今回初めて世に出るものみたいです。この10本の文献の話は、Portraits of Wittgenstein の volume 1 の p. xvii に書いてあります。

次に Hacker 先生による、おそらく第1版に対する推薦文を掲げてみます。出版社の home page からのものです。

''Portraits of Wittgenstein is a comprehensive collection of recollections and memoirs of the greatest philosopher of the twentieth century. It is a mesmerising array of snapshots of a fascinating and charismatic thinker, which will give delight to many readers, and provides indispensable raw materials for reflections on Wittgenstein and his role in his troubled times and the relevance of his thought to ours.''– Peter Hacker, Professor of Philosophy, University of Kent at Canterbury, UK


目次も出版社の home page から引用してみます。


Table of Contents


Volume I

Editors' Prefaces
Maps

Part I
1. Context, Family and Early Years
2. Cambridge, Iceland and Norway

Part II
3. The First World War
4. Wittgenstein and Homosexuality
5. Elementary School Teacher and Architect
6. Wittgenstein and the Vienna Circle


Volume II

Part III
7. Return to Cambridge

Part IV
8. The Second World War
9. Last Years as Professor of Philosophy
10. Wittgenstein and Ireland

Part V
11. Last Years
12. Assessments of the Man and the Philosopher

Notes on Contributors
Acknowledgements
Indexes

可能ならば、本書については内容の情報をもう少し、この日記で後日紹介できればと思っています。


英語論文 (出版年昇順で記載)

  • Dag Prawitz  ''On the Idea of General Proof Theory,'' in: Synthese, vol. 27, nos. 1-2, 1974
  • Arend Heyting  ''Intuitionistic Views on the Nature of Mathematics,'' in: Synthese, vol. 27, nos. 1-2, 1974
  • Michael Dummett  ''Critical Notice. [Review of] L. E. J. Brouwer: Collected Works,'' in: Mind, vol. 89, no. 356, 1980
  • Roy T. Cook and Jon Cogburn  ''What Negation Is Not: Intuitionism and '0 = 1','' in: Analysis, vol. 60, no. 1, 2000
  • Jc Beall  ''Is Yablo's Paradox Non-Circular?,'' in: Analysis, vol. 61, no. 3, 2001
  • Susanne Bobzien  ''The Development of Modus Ponens in Antiquity: From Aristotle to the 2nd Century AD,'' in: Phronesis, vol. 47, no. 4, 2002


和書

これら購入した和書のうち、最後の古書『誤訳』は、哲学の翻訳文の誤訳、問題点が指摘されていて面白そうだったので、しかも100円玉と50円玉1枚ずつで買うことができたため、入手しました。本書の前半は、言語論、翻訳論で、主に後半で哲学の翻訳文が俎上に載せられているみたいです。(哲学以外の文も俎上に載せられています。) 例えば取り上げられている哲学者としては、Sartre, Marcel, Bergson, Emmanuel Mounier, Pascal があるようです。Sartre の哲学を解説した Mounier の文章のなかで、パンに塗る単なる jam に関する言葉に対し、凝った意訳を施して、しかもその訳に難しい註釈を長々と付けている誤訳例が取り上げられていて、興味深いです(140-141, 149-150ページ)。どうしても哲学の文章って、うがった解釈をしがちになりますよね。簡単に理解できない文には、何か深遠ないみが隠されているのに違いない、と思い込んで、ありもしないいみを求めて深読みしすぎる傾向があるみたいです。原書を書いた本人からすれば、苦笑ものでしょうね。誤訳については私は人のことは言えないので、気を付けねばなりませんが…。あと、本書には、かつて人文書院から Sartre の翻訳が多数出て流行した時期がありましたが、その頃の翻訳の裏話のようなものも少し書いてあり、ちょっと面白いです。なお、本書の著者の先生方は、本書で誤訳を糾弾しておられるのではなく、きちんと誤訳を指摘しつつ、しかし感情的にならないで、穏やかに「なぜ、こんな間違いが生じるのだろう? その文化的背景や社会的事情には、何があるのだろう?」というように、批判対象に対し距離を取りながら、考察を加えておられるようです。


その他の和文