Der Beweis, daß eine Katze drei Schwänze hat.

語学の細かくて長い話が続いていますので、ここで息抜きに、小話を一つ。

 

日本の猫は、一匹につき、一本のしっぽを持っていますが、ドイツの猫は、一匹につき、三本のしっぽを持っていることが証明できます。

あるいは言い換えると、日本の猫は、一匹につき、三本のしっぽを持っていることは証明できませんが、ドイツの猫なら三本持っていることが証明できます。

 

まず、日本の猫は、一匹につき、三本のしっぽを持っていると証明しようとしても、それができないことを示しましょう。

日本猫 証明

1. 猫一匹は、猫零匹よりも一本多くしっぽを持っている。

2. どの猫も二本のしっぽを持っているということはない。

3. 故に、猫一匹は、三本のしっぽを持っている。

1. はちょっと変わった言い方ですが、まぁ、正しいでしょう。2. は正しいですね。こうして前提はどちらも正しいと言えるでしょうが、これらの前提から結論の 3. は出てきません。というわけで、日本の猫は、一匹につき、三本のしっぽを持っていると証明しようとしても、それはできません。

 

一方で、ドイツの猫は、三本のしっぽを持っていると証明できます。やってみましょう。

ドイツ猫 証明

1. Eine Katze hat einen Schwanz mehr als keine Katze.

2. Keine Katze hat zwei Schwänze.

3. Also hat eine Katze drei Schwänze.

どうですか、証明できたでしょ。

 

「ドイツ猫 証明」を訳してみましょう。

1. 猫一匹は、猫零匹よりも一本多くしっぽを持っている。

2. 猫零匹は、二本のしっぽを持っている。

3. 故に、猫一匹は、三本のしっぽを持っている。

ドイツ語の証明を見ると、二つの前提はともに正しいですし、これらの前提から確かに結論が出てきます。よってドイツの猫は三本のしっぽを持っています。

 

さて、この証明のどこが間違っているでしょう? 答えは言うまでもないですね。

念のためにその答えが知りたいという方は、

関口存男  『独逸語大講座 第4巻』、関口存男生誕100周年記念著作集、ドイツ語学篇 6, 三修社、1994年、初版1931年、初版439ページ、記念著作集版323ページ、

をご覧ください。今日の話はここに書かれていることを、ほんのちょっとだけひねったものにすぎません。(なお、この『独逸語大講座』は Fraktur で書かれています。)

 

ちなみに、上のような主張、詭弁は、記述の理論以前の B. Russell なら本気で言い出しかねないかもしれませんね。

これで息抜きになったでしょうか? いや、その答えは聞かないことにします。ではまた。