語学の細かくて長い話が続いていますので、ここで息抜きに、小話を一つ。
日本の猫は、一匹につき、一本のしっぽを持っていますが、ドイツの猫は、一匹につき、三本のしっぽを持っていることが証明できます。
あるいは言い換えると、日本の猫は、一匹につき、三本のしっぽを持っていることは証明できませんが、ドイツの猫なら三本持っていることが証明できます。
まず、日本の猫は、一匹につき、三本のしっぽを持っていると証明しようとしても、それができないことを示しましょう。
1. はちょっと変わった言い方ですが、まぁ、正しいでしょう。2. は正しいですね。こうして前提はどちらも正しいと言えるでしょうが、これらの前提から結論の 3. は出てきません。というわけで、日本の猫は、一匹につき、三本のしっぽを持っていると証明しようとしても、それはできません。
一方で、ドイツの猫は、三本のしっぽを持っていると証明できます。やってみましょう。
どうですか、証明できたでしょ。
「ドイツ猫 証明」を訳してみましょう。
ドイツ語の証明を見ると、二つの前提はともに正しいですし、これらの前提から確かに結論が出てきます。よってドイツの猫は三本のしっぽを持っています。
さて、この証明のどこが間違っているでしょう? 答えは言うまでもないですね。
念のためにその答えが知りたいという方は、
・関口存男 『独逸語大講座 第4巻』、関口存男生誕100周年記念著作集、ドイツ語学篇 6, 三修社、1994年、初版1931年、初版439ページ、記念著作集版323ページ、
をご覧ください。今日の話はここに書かれていることを、ほんのちょっとだけひねったものにすぎません。(なお、この『独逸語大講座』は Fraktur で書かれています。)
ちなみに、上のような主張、詭弁は、記述の理論以前の B. Russell なら本気で言い出しかねないかもしれませんね。
これで息抜きになったでしょうか? いや、その答えは聞かないことにします。ではまた。