入手文献: St. Louis Hegelians

  • Chrystine E. Cassin  “Russell's Discussion of Meaning and Denotation: A Re-examination”, in E.D. Klemke ed., Essays on Bertrand Russell, University of Illinois Press, 1970
  • ゴットロープ・フレーゲ  「ルードウィヒ・ウィトゲンシュタイン宛書簡」、野本和幸訳、『みすず』、みすず書房、第410号、1995年5月号
  • H.G. タウンゼンド  「第八章 セント・ルイスの哲学」、『アメリカ哲學史』、市井三郎訳、岩波現代叢書、岩波書店、1951年

1本目はRussellのGray's Elegy argumentに関する論文。
2本目は、以前にcopyして持っていたのに行方不明になっているので、再度念のために入手。勁草書房版に再録されている。一字一句異同なしなのかどうかは未確認。


3本目の文献について。
数日前、American pragmatismについて、何かよさそうな洋書を勧めてほしいという問い合わせがあり、pragmatismの歴史を簡単に調べ、本を探索した。当時当地にはドイツ観念論が見られ、St. Louis Hegelianというようなtitleの本が現在出ている。このような本が出ていることは前から知っていたが、「ずいぶんminorだなぁ」というぐらいにしか思わず、なぜまたSt. LouisでHegelなのかについて、調べもしなかった。
しかし次の文献を読んでいると

481ページの註6にThe Journal of Speculative PhilosophyはSt. Louisに創刊されてHegel哲学の普及に努めたとある。なるほど、そういう関連なのか。
ただ、この註には、恐らくであるが、誤りが含まれている。
伊藤先生の註をすべて引く。

『思弁哲学雑誌』(Journal of Speculative Philosophy)は、前年の一八六七年にミズーリ州セントルイスにおいて、ドイツ出身のウィリアム・ハリスによって創刊された、アメリカで初めての −というよりも英語の雑誌として世界初の− 季刊の哲学専門雑誌である。ハリスは四八年の革命の失敗によってアメリカに移住したドイツ人であり、この雑誌を舞台にヘーゲル主義の普及に努めた。


しかしThe Internet Encyclopedia of Philosophyの“St. Louis Hegelians”という項目冒頭に次のようにある。

The common name given to a group of amateur philosophers founded and led by William Torrey Harris (1835-1909) and Henry Conrad Brokmeyer (1828-1906). Harris, a New Englander born in Connecticut and educated at Yale, first became acquainted with idealism through the Transcendentalists, mainly from his attendance in 1857 at the Orphic Seer's Conversations of Amos Bronson Alcott (1799-1888).

またEncyclopædia Britannica On Lineの“William Torrey Harris”の項目冒頭では次のようにある。

born Sept. 10, 1835, North Killingley, Conn., U.S.

以上の記述からすると、W. Harrisさんはドイツ出身ではなくアメリカ生れのようである。彼がドイツ出身で1848年三月革命の失敗で移住してきたとすると、当時彼は12-13才の、日本でいえば小学 6 年生ということになる。


またHenry Conrad Brokmeyer(1828-1906)さんについて、上記Internet Encyclopedia of Philosophyの同じ項目では、次のようにある。

Brokmeyer was a Prussian immigrant who arrived in New York as a young man of sixteen.

Brokmeyerさんがドイツ出身のようだ。上記入手文献のタウンゼンドさんの文でも、アメリカにやってきたのはBrokmeyerさんだと書いてある。しかし16才で移住してきたとなると、三月革命以前にアメリカへ来たことになる。


いずれにせよ、これらの記述をよく読むと、それぞれの文献にあれこれと矛盾が見られ、混乱しており、正確なことはよくわからないようだ*1。だからもしかすると伊藤先生の註も、これらの混乱の犠牲になられた結果なのかもしれない。
細かくてminorな話なので、もうこれ以上詳説するのはやめますが…。
なお、私の方こそ間違っていましたら、すみません。


以下は某有名HPよりまとめて入手。

  • Aldo Antonelli  “Logicism, Quantifiers and Abstraction”, unpublished ms., 31 pp., March 2008
  • Bruce A. Aune  “Feigl and the Development of Analytic Philosophy at the University of Minnesota”
  • Marcus Rossberg  “Leonard, Goodman, and the Development of the Calculus of Individuals”, forthcoming in G. Ernst et al. ed., Nelson Goodman: From Logic to Art, Ontos Verlag
  • Amie L. Thomasson  “Conceptual Analysis in Phenomenology and Ordinary Language Philosophy”, in Michael. Beaney ed., The Analytic Turn: Analysis in Early Analytic Philosophy and Phenomenology, Rountledge, 2007


1本目がFregeに強く関係しており、興味深い。

*1:タウンゼンドさんの文では、BrokmeyerさんがJournal of Speculative Philosophyを創刊したと取れる記述がある一方で、その創刊はHarrisさんだと取れる記述もある。