フランス科学哲学の特徴

  • ドミニック・ルクール 『科学哲学』 沢崎壮宏、竹中利彦、三宅岳史訳 文庫クセジュ891

この本によるとフランスの科学哲学には3つの特徴があるという。大雑把に記せば

フランスの科学哲学は

  1. 科学史と絡めて科学哲学を展開する、あるいは科学史を展開する中で、そこに見られる重要概念の哲学的分析を行なう
  2. 経験論を拒絶する、あるいはsense dataなどの経験的証拠を帰納して作られた科学理論を考察するのではなく、初めから帰納する前にあるはずだと言う科学理論を考察するというスタンスを取る
  3. 論理学を過大に評価しない、あるいは特にFrege-Russell-Carnap流の論理主義を拒否する

とのことようである。1の典型で私がすぐに思いつくのはA.Koyreである。2のようなスタンスを取る理由として著者はComteの影響を上げている。3の原因に対しては、副次的には上記論理主義や論理学重視のスタンスがフランスに根付くための旗振り役になるはずであった研究者たちが、事故や戦争のために若くして20〜40代のうちになくなってしまったことと共に(クーチュラ、エルブラン、ニコ、カヴァイエス)、主としてPoincareの影響が大きいとのことである。
そしてどうやらこれら3つの特徴の決定的で持続的な刻印をフランス科学哲学に刻み付けたのは、G.Bachelardによるところ大のようである。なるほどね。金森修さんがこのあたりについて単著をいくつかものされておられるので余裕があれば覗いてみようかな。しかし英米系しか触れたことのない身ゆえ、Bachelardのようなどこか文学的な感じのする科学哲学に肌が合うかどうか、すごく心配だけど。