Principia を書いたのは誰なのか?

  • Bertrand Russell  “Whitehead and Principia Mathematica

このRussellの文は彼とWhiteheadとのPrincipiaにおける役割分担を明らかにしていますが、先日からの三浦さんによる『ラッセルのパラドックス』では、PrincipiaはRussell単独の業績であるかのような書かれ方をしています。あるいはRussell単独の業績と見なすのが通例で、それを追認するかのような書かれ方をしていると思われます*1。しかし上に挙げたRussellの文ではRussell自らその反例を記しています。私一人で書いたのではない、私一人が文責を負う部分はわずかでしかない、私にしろWhiteheadにしろ、それぞれ一人だけで書けるものではなかったのだ、といった感じのことを述べています。具体的にそのことをRussellが述べている文をここに引用したいのですが、夜も遅いですし、寝不足で頭が痛いのでやめておきます。後日記載するかもしれません。
いずれにせよ常識的に考えて、PrincipiaをRussell単独の著作であるかのような扱い方をすることは、おそらく歴史的事実に明白に反することだと思われます。あるいはすでに誰かが綿密で周到な調査によりPrincipiaの草稿などを一枚一枚調べ、文体論的にも統計学的にも、そしてその他の事実やRussell=Whiteheadの哲学を考慮しても、それはRussell単独の著作と呼ばれるにふさわしい、という決定的な研究結果が出ていれば別ですが、さもなければ安易にRussell単独の著作だと考えることは歴史学的な考慮を無視した非学問的な態度だと思われます。まぁもちろん今述べたような歴史的な研究がすでに発表されていて知らぬは私一人ばかりだったりするのかもしれませんが…。その時はすみません、誤りを認めます。でも本当にそんな歴史的研究があれば一度読んでみたいな。

*1:三浦俊彦 『ラッセルのパラドックス −世界を読み換える哲学−』、岩波新書、4ページ。