メモ: 『ガリバー旅行記』、ロジェイズ・シソーラス

へぇ〜っと思ったことを二つ引用しておきます。いずれも

  • 浜口稔  「普遍言語よりIT社会へ 愛・知をこめて ―検索エンジン付き哲学機械へ向けての緒論」、『月刊言語』、(特集名: 人工言語の世界 ―ことばを創るとはどういうことか) 2006年11月号、大修館書店

より。

イギリスは当時もっとも言語論が盛んな国でありましたが、その反動勢力にも強烈な存在がおりました。ジョナサン・スウィフトであります。普遍言語運動は終息してみれば、大仰な頓珍漢に映ったのでしょうね。『ガリバー旅行記』(一七二六年)は、ウィルキンズ一派の哲学言語 −遠くはルルスの真理論証機械− に辛辣な牙をむいたパロディ本であります。真正文字[real character]の即物主義に対しては、さらに辛辣。理論に正気を曇らされた学者先生たちの言語改革の笑うべき弱点をえぐり出し、ロイヤルソサエティの活動を片っ端から撫で切って、面白っちゃあ面白い。ですがスウィフトの普遍言語理解は、まぁ小説のネタですからね、大雑把で偏り過ぎ。肝腎な部分には踏み込んでいません。*1

ガリバー旅行記』ってそうなんだ。

もうひとつ、辞典や百科全書への展開にも注目しましょう。ロイヤル・ソサエティ[ママ]の事務局長を長年勤め、無類の計算機狂いであったP.M.ロジェイの主題別語彙分類(シソーラス)は、ウィルキンズからの影響を明言しております。*2

ロジェイズ・シソーラスのロジェイがウィルキンズの流れにあったとは知らなかった…。

*1:浜口、24-25ページ。

*2:浜口、26ページ。