読書: Frege's Steps Next to Grundlagen

以下をスターバックスでちらほら読む。

  • Joan Weiner  Frege Explained: From Arithmetic to Philosophy, Open Court Publishing, Ideas Explained Series, vol. 2, 2004

近頃寝不足で、今日も日中から眠く、あくびばかりしていてあまり読み進めることができなかったが、大変興味深く読む。


Fregeは1884年Grundlagenを出した後、しばらく間をおいて1891年に“Funktion und Begriff”を明らかにしている*1。続く1892年には“Uber Begriff und Gegenstand”, “Uber Sinn und Bedeutung”を世に問うている。
どうして彼はこれらの仕事をGrundlagenの後になしていたのだろうか。上記Weinerさんの本を読んでいると、簡明に説明がなされている*2


GrundlagenにおけるFregeの最も革新的/核心的な主張は、数が概念に関する言明についてのものだ、ということである。彼はこの主張を、Grundlagen冒頭に掲げた「概念と対象との区別を見失うな」という原則を堅持するなかで、述べているようである。そして彼は数が概念の外延を使って定義できると言っている。

ところでFregeはGrundlagenにおいてもそれ以前の著作においても、概念と対象の区別について詳細に論じたことはなかったし、概念の外延について詳しく説明したこともなかった。数が概念の外延で定義できると言っても、概念の外延に対するBegriffsschrift流の論理的記法も明らかにしていなかった。
さて、そうするとGrundlagenの後になされるべき仕事は見えてくる。彼の論理主義において、数言明を概念の外延を使って論理学に還元することを目指すのならば、概念の外延が、差し当たりではあっても一応何であるかを明らかにする必要があり、それに論理学上の表記法を与える必要が生じてくる。彼によると、概念の外延は概念と密接な関係にある。そして概念は関数の特殊例である。さらにこの関数は対象との対比から理解される。つまり概念の外延、概念、関数、対象、これらを闡明にしなければならず、しかしGrundlagenを書いたときにもまだこれらのことは詳説されていなかったのである。

こうしてFregeはGrundlagenを書いた後、概念の外延、概念、関数、対象などを明らかにすべく、“Funktion und Begriff”などの一連の重要論文・画期的論文の世界へと入っていくのである。数を、概念・関数・対象との関連のなかで、概念の外延として厳密に定義するために、概念の外延、概念、関数、対象などをあれやこれやとこねくり回しているのが、1890年代初頭の例の画期的論文達なのだ、というわけである。


とまぁ、ざっとではあるが、敷衍しながら記すと以上のような感じだろうか。なるほどね、との印象を受けます。まだ記したいことがあるし、解明・説明しなければならないこともあるが、時間がかかりすぎるのでもうやめておきます。

おやすみなさい。

*1:どうしてFregeは1884年から1891年の間に、まったくではないものの、ほとんど仕事を刊行していないのか、という疑問はよく触れられる。内在的にどうなのかは私にもよくわからないが、外在的には1887年に彼は結婚をしているので、そのためFregeは1887年の前後数年は私事に忙しく、落ち着かなかったのかもしれない。

*2:Weiner, pp. 69-70 あたりから、それ以降を参照。