Landini論文メモ

先日次のLandini論文を入手してぱらぱら眺めていた。

  • Gregory Landini  “The Ins and Outs of Frege's Way Out”, in: Philosophia Mathematica, vol. 14, no. 1, 2006

この論文で興味深く感じる点を一つ、簡単に記しておきたい。


この論文は、Russell's Paradoxに対するFregeの対処について論じられている。


ところでまず史実を極手短に確認しておきたい。
私達の知っているところでは以下のようである。


Fregeは自らのlogicを完成させ、それを本にして出版しようとしていた矢先、Russellにそこから矛盾がでることを教えられる。
急遽Fregeは自分のlogicを手直しし、修正版を出版する。彼はこれなら大丈夫だと考えていた。
しかし後になって、まず最初にLesniewskiにより、Fregeの修正版logicからも矛盾が出ることが証明される。
この結果はSobocinskiによる報告から知られるようになった。
その後、GeachもFregeの修正版logicから矛盾が出ることを証明する。
そしてこの後にQuineが、Geachの証明の条件を少し緩めたものからも矛盾が帰結することを証明した。
これらの一連の結果、私達はFregeのlogicからは、たとえその修正版といえども矛盾しているのだと知るに至った。
以上は歴史的な事実であろう*1


ところで上記のLandini論文は、このような歴史的事実に対して反旗を翻している。
このような歴史的事実を、いわば否定しているのである。
一体何をどう否定しようというのだろう?
既定の事実と目されている、Frege's Logicの矛盾へと至る顛末に対し、どう否定できるのか?


多分、続く…。

*1:以上のような事実があると考えているからこそ、C. Wrightさん達の、Neo-Fregean Logicismが生きてくるのであろう。このNeo-Fregean Logicismの話はまた別なので、ここではその話は割愛する。