洋書類

  • Agustín Rayo  The Construction of Logical Space, Oxford University Press, 2013
  • Paul Elbourne  Definite Descriptions, Oxford University Press, Oxford Studies in Semantics and Pragmatics, no. 1, 2013
  • George Berkeley  The Analyst, David R. Wilkins ed., This edition based on the original 1734 first editions of the Analyst published in London and Dublin, 2002. http://www.maths.tcd.ie/pub/HistMath/People/Berkeley/Analyst/Analyst.pdf
  • David Marans  eLogic Gallery: Ancient Greece to the 21st Century, Edition 15.5, 2013. http://humbox.ac.uk/3682/

Elbourne さんの本は記述の理論の本。Russell は記述句という syntactical な単位を、そのままでは semantical な単位と見ませんでしたが、本書では、この Russell の見解に反対し、記述句という syntactical な単位が、そのままで semantical な単位になっていることを、英語という言語を通じて立証しようとしているように思われます。そのようなわけで、本の中を見ると、ほとんどもう言語学みたいに感じられる。哲学を通り越さんばかりに感じられる。先日、次の本を手に取って見てみたことがありましたが、

  • Joseph LaPorte  Rigid Designation and Theoretical Identities, Oxford University Press, 2012

これも中を見ると、かなり言語学的な話になっていた。素朴に哲学しようと思っても、私にはこの本では無理なようだし、言語学に疎いこともあるので、この本は購入を見合わせました。

Berkeley の小冊子は、解析学者の無限小の観念に反論をした有名な話が出てくる本です。ε-δ 論法について調べていたので入手。

Marans さんの本は、古代ギリシアから現代に至る欧米の論理学者を簡単に紹介する本。一人一ページを使って、各論理学者が論理学というものをどのように考えているかを、当人の言葉を引用しつつ紹介しています。その際、その論理学者の写真やゆかりの地を写した写真も掲載されています。私には見たことのない写真も見られて貴重な感じです。Gödel さんのカラー写真があったり、Kripke さんの high school 時代らしい時期の写真もあったりします。ただし、どうも間違った写真も掲載されているようで、注意が必要かもしれません。例えば、p. 115 を見ると、William Ernest Johnson さんが紹介されていて(Russell の logic を勉強していると、Johnson さんのことに触れる機会があります)、そこになぜだか Peano さんの写真が掲げられている。そのページには、3枚、写真が掲載されていて、うち2枚は人物写真で、これら2枚は上と下に配されていますが、上の人物の写真は Peano さんだと思います。これは Peano さんの有名な写真ですので、なぜこんな間違いが起こっているのか、よくわかりません。あと、この論理学者の歴史に関する本は、面白く貴重だと思いますが、通常、論理学者とは見なされていない人物も entry されているようです。例えば Heidegger さんなんかも紹介されている。確かに Heidegger さんは論理学について論じていたけれど(彼は Frege にも言及していたことがありました)、普通は彼を論理学者とは見なさないだろうし、当人も多分ですが、普通のいみで自分を論理学者だとは見なさなかったのではないでしょうか。というわけで、この本は数理論理学者が紹介されているともに、哲学者で論理学を論じたことのある人物も紹介されている本です。こういう本が net で見ることができて、無料で DL 可能だとは最近まで知りませんでした。そこに掲載されている写真を見ているだけでも、個人的には楽しいです。


和書

  • 樋口昌幸  『英語の冠詞 歴史から探る本質 増補版』、広島大学出版会オンデマンド 1, 広島大学出版会、2013年

英語の冠詞の本です。この本は、corpus を使って、英語の冠詞が歴史的にどのような変遷を経てきたのかを実証している本です。この本を読んでも、おそらくですが、すぐさま英語の冠詞の使い方が習得できるというものではないと思います。そのような実用英語のための本ではありません。英語史、英語学の少し専門的な本です。中英語や近世の英語を知っていることが望ましいです。ただし知らなくても読めると思いますが、知っている方がより面白く読めると思います。英語の冠詞をできるだけ正確に使いこなしたいと思っている方は、副読本として読むと、すぐに冠詞の使い方に差が出てくるわけではありませんが、冠詞の理解に深みが増してくると思われます。しかし繰り返しますが、専門書と言える本だと思いますので、英語史の基礎知識がまったくないと、読めないわけではありませんが、読むのにちょっと時間がかかるかもしれません。


論文類

飯塚先生の論文は survey 論文です。近年の Kant の数学論を概説されています。これと併せて、つい先日 net に上がった次の文献も見てみるとよいように思います。飯塚論文と話が重なるところもあるように見受けられます。

  • Lisa Shabel  ''Kant's Philosophy of Mathematics,'' in: The Stanford Encyclopedia of Philosophy, July 19, 2013.

古田先生の論文は、先生が分析系の哲学者であることからも想像されるように、分析哲学に見られる哲学の方法について、通覧しておられます。具体的には、言語分析、概念分析、思考実験、方法論的自然主義の四つの方法が比較、検討されています。

Hayek さんの思い出話については、以前にこの日記で言及したことがあります。次をご覧ください。2009年8月8日、項目「入手文献」。