読書: Schroder と Boole の関係

今日読んでいた文献を列挙する。

    • 末木さんの記号論理学史
    • 薬袋本
    • M.ウェーバー世界宗教の経済倫理 中間考察の一部(愛・恋愛について論じている部分) in: his 『宗教社会学論選』
    • 藤村龍雄  「『概念記法』の言語思想(その一)」
    • Volker Peckhaus  “Was George Boole Really the ‘Father’ of Modern Logic ?”

Peckhausさんの論文にはまた意外なことを教えていただく。夜も遅いし明日もあるので手短に記そう。
上の意外なこととはE.Schroderに関することです。Schroderは論理代数派の代表者でBooleに始まる論理代数の興隆の頂点に位置した人だと理解しています。Booleの論理学を受け継ぎそれを大成させた人という感じです。ところがPeckhausさんの調査によると以下の通りだというのです。

It should be stressed that Schroder wrote his early considerations on formal algebra and logic without any knowledge of the results of his British predecessors, whether the Cambridge symbolical algebra or George Boole's algebra of logic. He rather stood in the tradition of German combinatiorial algebra and algebraic analysis*1.

Schroderが具体的に初めに影響を受けたのはC.F.Hindenburg、M.Ohm、Hermann Gunther Grassmann、Hermann Hankel、Robert Grassmannであり、彼らを勉強する中で論理学の研究の方向が定まり、その後Booleに出会うのだが、最初に定まった方向性に大きな変化は生じなかったという感じの報告をPeckhausさんはされているようです*2
これはとても意外な感じがします。てっきりSchroderは最初論理学としてBooleを学び、その後の結果、論理代数を発展・大成させたものとばかり思っていましたが、Schroderの論理学に対する知識の土台はBooleではなくてドイツの代数学者たちからきているのですね。その土台の上にBooleが来たわけだ。どうやら当時のイギリスとドイツの代数学者は多分似たようなことを考えていたみたいで、ドイツの代数学をまず勉強したSchroderは割とすんなりとBoole流の論理代数を消化した感じと推測されます。
まさに歴史は思うほど単純じゃないわけだ。難しいものだ、面白くもあるけれど。

*1:Volker Peckhaus “Schroder's Logic” in: Dov M. Gabbay and John Woods (ed) Handbook of the History of Logic, Volume 3 The Rise of Modern Logic: From Leibniz to Frege, p.568.

*2:Volker Peckhaus “Was George Boole Really the ‘Father’ of Modern Logic ?”, pp.277-278.