• Christian Thiel  “‘Not Arbitrarily and Out of Craze for Novelty’: The Begriffsschrift 1879 and 1893”, in: M. Beaney and E. Reck, ed., Gottlob Frege, Critical Assessments of Leading Philosophers Series, Vol. 2, Frege's Philosophy of Logic, Routledge, 2005
  • Gordon Baker  “Logical Operators in Begriffsschrift”, in: M. Beaney and E. Reck, ed., Gottlob Frege, Critical Assessments of Leading Philosophers Series, Vol. 2, Frege's Philosophy of Logic, Routledge, 2005
  • Mark Wilson  “Ghost World: A Context for Frege's Context Principle”, in: M. Beaney and E. Reck, ed., Gottlob Frege, Critical Assessments of Leading Philosophers Series, Vol. 3, Frege's Philosophy of Mathematics, Routledge, 2005
  • Erich H. Reck  “Frege's Natural Numbers: Motivations and Modifications”, in: M. Beaney and E. Reck, ed., Gottlob Frege, Critical Assessments of Leading Philosophers Series, Vol. 3, Frege's Philosophy of Mathematics, Routledge, 2005
  • 織田稔  『英語冠詞の世界 ―英語の「もの」の見方と示し方』、研究社、2002年

個々の事例を記憶しなければならないかのような、われわれにとって用法が煩雑な冠詞を、難なく使いこなす母語話者の言語直感の中身は何なのか。本書では、意味対象の弁別という大きな原則により、個体性の認識いかんが不定冠詞の用法を決め、部分要素と全体の関係などの選別的な卓立指示が定冠詞の使い方を左右していることを解明し、特定指示との関連で人称代名詞の絶妙な働きについても日本語の例を交えて詳論する。

Thiel論文では、Begriffsschriftの論理体系と、Grundgesetzeの論理体系とを比較している。Thielさんの診断によると、前者の論理体系から後者の論理体系へのステップにおける決定的な違いは、前者が現代の量化論理学の始まりだとすれば、後者は現代の公理的な集合論の始まりなのだ、という点だそうである。すごいなそれは。

Baker論文は、Begriffsschriftの命題結合子や普遍量化子が、数学の関数の一種として分析されて生み出されてきたものなのか否かが、問われています。Dummettさんはそれら結合子や量化子は関数と見なされていなかったとしているらしいのですが、Bakerさんはそれに反対し、関数の概念を拡張することでBegriffsschriftの論理学が生み出されたことを立証しようとされているみたいです。

Wilson論文は、19世紀ドイツの射影幾何学にFregeの研究を位置づける今までのお仕事の続きのようである。

Reck論文は、Frege以前の自然数概念の理解から、Frege自身のRussell's Paradox以前における理解、そしてそのParadoxに出会った後のFregeによる自然数理解を追跡し、さらには現代のNeo-Fregeanな自然数概念の理解の例を3つ上げて、その跡付けを行っています。この最後の3つとは、(1) D. Bostock, H. HodesさんらのFrege救出の試み、(2) C. Wright and B. Haleさんとそのお仲間のBools, Burguess, Demopoulos, Fine, Heckさんらの試み、(3) QuineのNFによる試み、以上のようです。

ちなみに、Thiel論文はもとドイツ語の論文で、この英訳は今回初出。その他の論文も今回初出の未刊論文だったもの。


織田本は前からほしいと思っていた本。しかしどれも小口が汚い。今日書店店頭で見ると、重版がかかり、最近印刷製本されて小口がとてもきれいな本が棚にある。即購入。気長に待っていてよかった。そのうち読もう。