入手文献: 『ヒルベルト 歿後30年を記念して』

今日、古書店で変わった本を見つける。
今まで見たこともないような本である。
このような本があるとは、私はまったく知らなかった。
多分かなり珍しい本なのではないかと思う。


これは一体何なのか?


古書店の書棚に薄い本が挿してある。
濃紺にシルバーの背文字で「ヒルベルト」と記されている。それだけである。
何かの間違いではないのかと、手を伸ばして取り出してみると、ちゃんと本当にHilbertに関する本である。
縦20cm、横15cm、背の幅は1cmぐらいで、全部で154ページほどの厚紙仕様の本。
表表紙にはHilbertのsignのエンボスと、「ヒルベルト30年祭」、「大阪府立和泉高等学校」の文字がエンボス仕様で刻まれており、
裏表紙の中央には校章がエンボス加工されている。


なかを見るとtitle pageの次にHilbertの写真が掲げられている。
籐椅子に座ってうつむき加減にものしたためている例の写真である。
本文では多くのよく知られた先生方が、Hilbertに関して、随想の類いを寄稿されている。
全部で15人ぐらいだろうか。


Webcatで調べてみると、この本を所蔵しているのは東京大学駒場図書館のみとなっている。
もちろんwebcatは、そこに参加していない図書館や図書室があるし、
参加していても遡及入力が追いついていないところもあるだろうから、
本当に国内では東大駒場にしかないのかどうかはわからない。


さらにこの本を出した大阪府立和泉高等学校をnetで調べると、
この本の編集主幹である副田欽一郎先生のページがあり、
今取り上げている本を当時、大阪府下の全高校に送ったとのことである。
どうやら本の装丁からも推察できるが、市販されているものではないらしい。
結構本当に珍しい本なのかもしれない。珍しいというだけで何だか有り難味が増してくる。


さて、目次を以下に記してみる。誰かの役に立つかもしれない。立たないかもしれないけれど…。

  • ヒルベルトの憶い出  正田建次郎
  • ヒルベルト数学の一断面  寺阪英孝
  • ヒルベルトについて  三村征雄
  • 平面幾何学の基礎  浅野啓三
  • ヒルベルト数学基礎論  松本和夫
  • ヒルベルトの第5の問題  横田一
  • ヒルベルト祭に寄せて  永尾汎
  • 机・椅子・ビール瓶  村上信吾
  • 無題  富山敏郎
  • フルヴィッツとミンコフスキー  副田欽一郎
  • 公理について  山田文夫
  • 数学とは何か、又如何にあるべきか  大西正男
  • 公理主義の数学  工藤達二
  • ヒルベルトの数学上の業績  井関清志
  • D. Hilbertの論文と著作[D. Hilbert論文集全3巻目次及び追加文献情報]
  • 公理論の背景  中村幸四郎
  • D. Hilbertの講演(原文)[“Naturerkennen und Logik”(Naturwissenschaften 1930, S. 959-963)]
  • 年表[1850-1950年における数学史年表]

松本和夫先生の文を見ると、先生は最初Poincareの翻訳を通じてHilbertを知ったそうである。
このPoincareや田辺元の科学哲学・数理哲学の本を熱心にお読みであったらしい。
そしてHilbertとAckermannの例の教科書を読むことで、本格的にHilbertに入門されたようである。