二重否定が肯定なら、二重肯定は否定か?

今日、生協の学食でお昼ご飯を食べながら東京大学出版会のPR誌を読んでいると、長谷部先生がまた面白い話を記してくれている。そのまま引用させていただきます。

オックスフォードの日常言語学派の開祖として知られるJ. L. オースティンがアメリカで講演したおり、二重否定が肯定を意味することは多くの言語について知られているが、二重肯定が否定を意味する言語は知られていないと述べると、聴衆の一人であったモーゲンベッサー [Sidney Morgenbesser] は、馬鹿にするかのように、「yeah, yeah」とつぶやいたと伝えられている(あえて訳すと「へぇ、へぇ、(そうかい?)」となる)*1

ちなみにWikipediaの英語版で“Sidney Morgenbesser”を見ると、同じような話が記載されている。引用させていただきます。

During a lecture the Oxford linguistic philosopher J. L. Austin made the claim that although a double negative in English implies a positive meaning, there is no language in which a double positive implies a negative. To which Morgenbesser responded in a dismissive tone, "Yeah, yeah."

そこには“Yeah, yeah”ではなく、“Yeah, right.”だったとの証言もあると書かれている。
ところで、では、二重肯定が否定なら、三重肯定は肯定だろうか? Austinの目の前で、ニヤニヤしながら立ち上がり、“Yeah, yeah, that's right!”とやれば、私の印象ではAustinさんという方は非常にプライドの高い人であったようだから、否定されたと思い激怒して「君、失礼だ! 今すぐ退席したまえ!!」とかやりそうな気がします。どうなんでしょうか。とすると、三重肯定は肯定でなく、否定なのだろうか? この答えはpragmaticsの専門家にお任せ致します。

*1:長谷部恭男、「[憲法のimagination] 18 へぇ、へぇ」、『UP』、東京大学出版会、2008年9月号、26ページ。この先生の文の表題中の「[, ]」は引用者によるものではなく、原文のままである。