Frege's Complaints against Principia Mathematica


以下に、ちょっと面白いと思った Frege の発言を引用してみます。但し、そこから何か哲学的教訓を引き出そうとして、そうする訳ではありません。ただ面白いと思っただけで、残念ながら深いいみはありません。便宜上、和訳のみから引用します。訳注は省いて引きます。

[Frege より Jourdain 宛書簡 1914年1月28日]


遺憾なことに、私はラッセルの Principia があまりよく理解できませんので、ラッセルの理論 (Principia Mathematica 第一巻54頁以降) が、私の一階の関数と二階の関数の理論と一致するのかどうか、確信をもって述べることはできません。私は、「変項 (Variable)」という表現が締め出されてしまえば、どんなにせいせいすることかと思っています。そのわけは、あなたにはすでに一度書いたことがあります。私には、ラッセルの Principia を読むのは、非常に困難です。私はほとんどすべての文でつまづいてしまいます。


[この後 Russell の variable の観念が理解しがたいという、Frege の論難が延々と続く。]


 私の思うに、ラッセルの著作は、それに深く入り込んで行けば行くほど、ますます困難が山積していくようです。そういうわけで、ラッセルの本をこれ以上勉強するのは、こうした疑問が解消するまで、当分の間やめるつもりです。もしもあなたが私を助けて、ラッセルの本当の考えをもっとよく理解させてくださったら、感謝に堪えません。*1

何だかいかにも Frege らしい発言ですね。「Russell の Principia なんて、読めたもんじゃない」と言っているように感じます。しかしそういう Russell (や Wittgenstein, Carnap たち) によって、Frege の肯定的な評価は後代に伝えられたのであって、それを考えると何だか複雑な気分になりますね。今の引用文から見ると、Principia がこんなにも陰に陽に後世に影響を与えるとは、Frege としても思いもしなかったのではないでしょうか。

*1:G. フレーゲ、『フレーゲ著作集 第 6 巻 書簡集 付 「日記」』、野本和幸編、勁草書房、2002年、225, 231-32ページ。