Panopticon in Cuba

つい先日まで私の知らなかったことを一つ。

Panopticon というものがある。現代の哲学を勉強していると、時として出てくる。Michel Foucault の 『監獄の誕生 監視と処罰 (Naissance de la prison, Surveiller et punir)』を開くと載っていたと思う。そこには Panopticon の設計図の写真があったと思う。本が手元にないので、何ページに載っていたのかは、忘れたけれど、載っていたと思う。


さて、数日前に書店で次の新刊を手に取って中を見ていた。

すると、Panopticon の現物が存在するらしく、その現物の写真が載っていた。設計図だけではなく現物まで存在することは、私は知らなかった。どうやら随分前から、あの設計図そっくりの Panopticon の現物が存在することは、よく知られていたらしい。写真を見ると、なかなかすごそうな建物に見える。変な話だが、素敵な建物に見えます。*1

帰宅してちょっと調べてみた。問題の Panopticon は、上記の本にも書いてありましたが、Cuba に存在するようです。Cuba は薄い三日月みたいな形をした島ですが、その内側に浮かぶ一番大きな島がある。「青年の島 (Isla de la Juventud)」と呼ばれる島で、昔は「ピノス島 (Isla de Pinos)」と呼ばれていたらしい。ちょうど comma ' , ' のような、あるいはオタマジャクシが尾を左に振っているような形をした島です。ここに問題の Panopticon があるらしい。Google Maps で探してみた。するとありました。北緯21度87分、西経82度76分辺りです。島の北北東に当たります。上空から写真で見ると、丸いものが五つきれいに幾何学的に並んでいる。上の左右に一つずつ、その下の真ん中に一つ、そして下の左右に一つずつ並んでいる。:・: みたいな感じで並んでいる。Google Maps の検索欄に '21.877549,-82.766318' を入れて検索をかけてみて下さい。一発で出てきます。

この Panopticon は「プレシディオ・モデーロ刑務所 (Presidio Modelo)」と呼ばれていたようで、現在は閉鎖され、廃墟みたいになっているようです。Google Maps の上空からの写真でも、よく近づいて見ると、何となくそのことがわかります。でも一応国立博物館のようなものになっているらしい。というのは、ここは Cuba の歴史に縁の深いところのようで、以前に Fidel Castro が República de Cuba 建国の前に、この刑務所に収容されていたことがあったようで、Cuba 建国の歴史的遺産、República de Cuba 発祥の地みたいな感じで、保存されているようです。

以下の blog を見ると、この Panopticon の外部や内部のいくつかの写真を見ることができます。内部の写真には人の姿も映り込んでいるので、大きさや雰囲気がよくわかります。Castro は、政治犯として Panopticon の一望監視棟内の独房に入れられていたのではなく、共同房みたいなところに入っていたようです。Castro が使っていたとされる bed の写真も出てきます。また、囚人が収監されている Panopticon 本体のみならず、管理者側の事務棟も写真で出てきます。これは今は小学校のようなものとして使われているみたいです。

Model Prison
http://modelprison.blogspot.com/

(本日掲載しております写真は、Wikipedia Japan の項目「パノプチコン」からお借りしております。大変ありがとうございます。)

*1:Cuba の Panopticon の話は、土屋先生の上記ご高著講談社学術文庫版の103-117ページ、「キューバのパノプチコン」に載っています。