洋書

この本は1年ほど前に出た本なのですが、刊行されてからほどなくして現物を手に取り、「なかなか結構面白そうだな」と感じたので、そのうち購入しようと思っておりました。このたびようやく購入の運びとなりました。

次は、この本の Intro. 冒頭の文なのですが(p. xiii), これを一読して「面白そうだ」と感じました。邦訳は私訳/試訳です。誤訳しておりましたらごめんなさい。

Let an argument be modally valid just in case, necessarily, if its premises are true, then its conclusion is true. This book begins with the assumption that some arguments are modally valid. Chapter 1 − 'Propositions and Modal Validity' − argues that the premises and conclusions of modally valid arguments exist necessarily, have their truth conditions essentially, and are the fundamental bearers of truth and falsity. Again, some arguments are modally valid. So there are the premises and conclusions of modally valid arguments. So there are necessarily existing fundamental bearers of truth and falsity that have their truth conditions essentially. I shall call these entities 'propositions'. So there are propositions.


ある論証が様相的に妥当であるとは、次の場合に限るとしよう。すなわち、必然的に、もしその前提が真であればその結論も真である場合である。本書は、いくつかの論証が様相的に妥当であるという前提から出発する。第1章「命題と様相的妥当性」では、様相的に妥当な論証の前提と結論が必然的に存在し、それら前提と結論は本質的に真理条件を持ち、それら前提と結論は真理と虚偽の基本的な担い手であると主張する。ところで、いくつかの論証は様相的に妥当である。だから様相的に妥当な論証の前提と結論がある。よって本質的に真理条件を有する、真理と虚偽の基本的な担い手が、必然的に存在する。私はそれら担い手となっている存在者を「命題」と呼ぶことにする。したがって命題が存在する。

とても小気味がいいですね。いさぎよいですね。簡潔かつ正直に自己の立場を鮮明に表明されており、「私の言っていることが間違っていると言うのなら、どうぞ反論してみてください。受けて立ってあげますから」みたいな反応が Merricks 先生から帰ってきそうで、一読して気持ちのいい文章です。いろいろ突っ込むことができそうに感じられる文章ですね。先生は modally valid argument と logically valid argument を区別し、proposition と sentence を区別されているようです。前者の argument は必然性によって定義されるのに対し、後者の argument は形式 (form) によって定義されるみたいです(p. 3)。その結果、sentence から構成される logically valid argument とは別に、何か形而上学的な modally valid argument が存在するのだ、と先生は主張されているみたいです。「ほんとかなぁ?」と思ってしまうのですが、でもそうやって読者を誘惑し、本の中へ読者を引きずり込んでしまおうと、先生はわなを仕掛けておられるのかもしれませんね。


和書

  • 正保富三  『英語の冠詞がわかる本 [改訂版]』、研究社、2016年
  • 細谷行輝、山下仁、内堀大地編  『冠詞の思想 関口存男著『冠詞』と意味形態論への招待』、三修社、2016年
  • 浅野順一  『ヨブ記 その今日への意義』、岩波新書青版693, 岩波書店、1968年

2番目の本について、出版社の home page から紹介文を引用しておきます。

昭和初期から中期にかけて活躍し、現在でも世界的に評価の高いドイツ語学者関口存男(せきぐちつぎお、1894年〜1958年)。その晩年の大著である『冠詞―意味形態的背景より見たるドイツ語冠詞の研究―』の概要とその思想をわかりやすく解説した。

本書序文冒頭 (3ページ) によると、この本は関口存男『冠詞』全3巻B5版約2,900ページの「ダイジェスト版(要約)」だそうです。編者の方々が関口『冠詞』の内容を簡潔にまとめ直し、その際に『冠詞』に出てくる文章をそのまま切り出してきて、編者の方々のまとめ直した文の中に、練り込み盛り込んでいるようです。


PS

次の本は購入していないのですが、本屋さんの店頭で手に取ってみて、「これはすごいな、ほしいかな、買っちゃおうかな」と、思わず衝動買いしそうになった本です。

  • 酒井正雄  『世界の郵便ポスト 196ヵ国の平和への懸け橋』、講談社エディトリアル、2015年

出版社の解説文を引いておきます。

ポストを探せばその国の事情がわかる。ポストの向こうに平和と戦火が見える。趣味の領域を超えた郵趣家の、30年にわたる壮大な冒険!

ほぼ全世界の国々の街に立っている郵便ポストを写真に収めて網羅した本です。フルカラーのちょっと大判の本でイラストも入っています。いろんな国のいろんなポストが写真で紹介されています。すごい。店頭でちょっぴり読みふけってしまいました。世界中の美しい風景を写した本はよくありますが、当地の地元の身近な風景の方を見てみたいと思うことがよくあり、本書はそのような身近な街角にあるポストが写されているので、変わったポストとともに、その国のその街の雰囲気まで味わうことができます。行ったこともないし、聞いたことのあるようなないような、そんな小さな国のポストまで現地に行って写真に取っておられます(北朝鮮のポストも出てきます。青色みたいです。)。ただしアフガニスタンは近頃危険すぎて入国できず、人づてに現地のポストの写真を入手して掲載しています。また、つい最近国家として承認された南太平洋の何とかいう国にはまだ行けていないそうで、アフガニスタンとこの国以外は全部自ら行ってきたらしいです。それだけでもすごいですが。この本は今後資料的価値が出てきそうですね。何に使えばいいのか、20世紀後半から21世紀初頭の世界の郵便事情を把握するのに便利な文献となりそうですが、そのためにいつだれが使うんでしょうね。まぁ、きっと誰かが使って大変助けられるのだろうと思います。
本書を拝見させてもらって教えられたのは、小さな国でない限り(小さな国には街角にポストがしばしばないらしいです)、街角にポストがあって、郵便事業が維持されている国は、比較的政治的に安定した国であって、戦争などの混乱の渦中にある国や戦争直後の国などは、郵便などと、悠長なことをやってられないみたいです。ポストがあってそれが機能しているということは、その国は一応安定している証拠みたいです。それは知りませんでした。ただの郵便ポストですが、郵便ポストからその国が見えてくるんですね。本書を買いたいと思いましたが、私が買っても宝の持ち腐れになりますし、ただでさえ本が増えて困ってきているのに、このような大判の本をまた買ってしまったら、置く場所も困ってしまいますので、著者の方には悪いですが、購入を見送らざるを得ませんでした。また図書館で見かけたら、椅子に座ってじっくり拝見させてもらいたいと思います。(なお、この本に関する記述は記憶を頼りに書いていますので、間違っておりましたらすみません。)