• Michael Kremer  “The Argument of “On Denoting””, in: The Philosophical Review, vol. 103, no. 2, 1994

Russellのいわゆるthe Gray's Elegy argumentを読み解こうという論文。結構長い。
このargumentがなぜ重要であるのかは、一般的に言って、そこにおいてRussellがFregeのSinn und Bedeutung Distinctionを論破しているのではないか、と考えられているからだろうと思われます。ただ、専門家の間では、そのargumentでRussellは誰のどの理論を攻撃しているのか、そのことは自明ではないと考えられているようです。つまり、そのargumentでRussellはFregeのSinn und Bedeutung Distinctionを、成功しているしていないは別として、論破しようとしているのは自明である、ということは自明ではない、という訳です*1
上記M. Kremerさんの論文のintro. を読むと、the Gray's Elegy argumentが攻撃しているのはFregeの見解ではなく、自身のPrinciples of Mathematicsの見解であるとし、そのことを後々論証しようとの姿勢が示されている。
恐らくまずはthe Gray's Elegy argumentをFregeへの攻撃であると初めから予断してしまうのではなく、そのことを自明視しないで、虚心坦懐に読み直す必要があるのかもしれない。

*1:飯田先生の『言語哲学大全 I 論理と言語』、勁草書房、1987年 では、Russellのthe Gray's Elegy argumentがFregeのSinn und Bedeutung Distinctionへの攻撃であるとすることが、割と自明視されているように読める。184-188ページ参照。