Did Archimedes Anticipate Cantor?

ちょっとしたことを、一つ、二つ、記してみます。


何気なく FOM の archive で過去の面白そうな文を探して読んでいました。すると次のような発言がありました。

  • Alasdair Urquhart  “Archimedes's “Method”,” Mon Nov 19 13:09:03 EST 2007


この文章では次の書が取り上げられて論じられていました。

  • Reviel Netz and William Noel  The Archimedes Codex


この本は和訳も出ていて私も店頭で拝見させていただいたことがあります。

  • リヴィエル・ネッツ、ウィリアム・ノエル  『解読! アルキメデス写本 羊皮紙から甦った天才数学者』、光文社、2008年


上記 Urquhart さんによると、件の書で Netz and Noel さんたちは‘Archimedes anticipated Cantor’と主張していると記しておられます。Netz and Noel さんたちの話では、Archimedes は Cantor よりも遥か以前に [そしてまた Galileo よりもずっと前に (日記作者挿入)] one-to-one correspondence の方法でもって無限集合(のあるもの)同士がいわゆる対等・同数になることを示していたそうで、これは Netz and Noel さんたちによると‘great discovery’だそうです。このように上記の Urquhart さんは伝えています。そして Urquhart さんは、彼らの‘great discovery’が、実際のところ、まるで証明にも論証にもなっていないとして‘Gimme a break!’と激しく嘆いておられます。私としては Netz and Noel さんたちの原本も和訳もよく読んでおりませんので、判断が付きません。Urquhart さんは上記の氏の文の中で、Netz and Noel さんたちの「証明」なるもの(の一部?)を引用されており、それを見る限りでは、証明もしくは論証というにはかなり頼りないものに私でも感じられました。確かに‘Archimedes anticipated Cantor’だとするならば、とても興味深いことだとは思われますが…。(なお、上記の Urquhart さんの文章は、これに限らず Netz and Noel さんたちにかなり辛口です。しかし氏の文章の最後では‘Anyway, I enjoyed reading the book, and recommend it strongly to FOM subscribers, in spite of my criticisms above.’と述べておられますが…。)



そしてまた昨日購入したばかりの次の本を、ぱらぱらとめくっていると


52ページの脚注27で、以下のように書かれていました。

古代の地中海世界ですでに1対1の対応づけで「同数」を判断していたと言われています。地中海貿易では、遠方との商品のやりとりに船を使っていました。文字のなかった時代のことなのでしょうか、送った商品の個数を途中で誤魔化されないように、商品の個数だけの石を素焼きの密閉された壺に入れて商品と一緒に届けたのだそうです。受取人は商品と壺を受け取ったとき、壺を割って、その中の石と商品とを1対1に並べて誤魔化しの有無を判断したとのことです。*1

なるほど。Archimedes さんも古代の地中海の人でしたから、1対1の対応づけで同数を判断するという方法はご存知だったかもしれませんね。とはいえ、それだからと言って無限集合のあるもの同士が対等であることを、1対1の対応づけで Archimedes さんは判定したのだと結論することは早急でしょうけれど、なくもなさそうな気もしてきました…。どうなんだろう?


それだけです。
おやすみなさい。

*1:この引用の話の出典先を細井先生は記しておられませんので、どこまでそのまま受け取ってよいものか、私にはわかりません。