洋書: Hilbert, Logical Inferentialism, the Later Wittgenstein

  • William Ewald and Wilfried Sieg eds.  David Hilbert's Lectures on the Foundations of Arithmetic and Logic 1917-1933, Springer, David Hilbert's Lectures on the Foundations of Mathematics and Physics, 1891-1933 Series, vol. 3, 2013
  • James W. Garson  What Logics Mean: From Proof Theory to Model-Theoretic Semantics, Cambridge University Press, 2013
  • Hans Julius Schneider  Wittgenstein's Later Theory of Meaning: Imagination and Calculation, translated by Timothy Doyle and Daniel Smyth, Wiley-Blackwell, 2013

Hilbert's Lectures は、ずいぶん前から出ることが予告されていたもので、ようやく今年になって刊行されました。かなり前に Mancosu 先生の Bulletin of Symbolic LogicSynthese に載った Russell と Hilbert の関係を扱った論文、Zach 先生の、やはり Bulletin of Symbolic Logic に載った Hilbert と Bernays に関する論文、そして林先生の報告文を読んで、Hilbert's Lectures の logic 編は、出たらぜひ購入したいと思っておりました。何年も前に予約注文しておいたのですが、今年の前半にこの本が出たにもかかわらず、なぜか私の注文が通っていなかった。催促をかけてようやく先日確保しました。しかしものすごく分厚い本ですね。リーダーズ英和辞典第三版よりも分厚い。枕みたいだ。レンガ以上、ブロック以下、という感じ。

Garson 先生のご高著は、次のようなことを探究されているようです。つまり、言葉のいみは、どのように決まるのか、ある言葉のいみは、それが世界の側の何かと対応していることによって決まるのか、それともその言葉が論証の中で使われた際に、その言葉が果たす役割によって決まるのか、もしも後者のような論証中での役割が言葉のいみの決定にとって大変重要であると考えるならば、例えば連言や選言のような論理定項のいみは syntactical な導入則や除去則のような規則によって、どの程度決まると言えるのか。Garson 先生はこのようなことを検討されているようです。なお、ここから、proof-theoretic semantics のことを思い浮かべますが、この意味論を考慮しつつも、そこに留まることなく、より高い立場に立って先生は考察を繰り広げておられるようです。「より高い立場に立って」というのは、論理定項のいみや、文の真偽、論証の妥当性などを説明するのに、最初 model-theoretic な概念に依拠しないものの、一旦論理定項のいみが syntax によって定まったとされた後には、遠慮なく model-theoretic な概念を自由に使用して、論理定項のいみなどを分析しておられるようで、これはこれで構わないことなのだ、不整合ではないのだ、とする立場に立っていらっしゃる、ということです。

Schneider 先生の本は、ドイツ語の本 Phantasie und Kalküll, Suhrkamp, 1992 からの抄訳。当初、あの James Conant さんから、このドイツ語の本を全訳すべきことが提案されたのですが、出してくれる出版社を見つけられず、その後、あの Robert Brandom さんが、核となる部分の抄訳を出せばよいと改めて提案され、それならば、ということで刊行にこぎ着けたのが本書のようです。Foreword を、あの Charles Taylor さんが執筆されておられます。「あの」だらけですね。本書は後期 Wittgenstein の言語哲学を単に解説しただけの本ではないようです。例えば Kripkenstein や private language argument のような話は一切出てきていないみたいです。Index を見ても、それらに関する語がまったく上がっていません。この本はそれらの話ではなく、introduction を読むと、Dummett の the theory of meaning の話の続きをやろうとしている本だとわかります。Dummett 同様に、本書の著者は、full-blooded な the theory of meaning を擁護し、modest なそれを却下しようとされているみたいです。ただし、full-blooded な理論を擁護するとはいえ、Dummett が考えるような original な姿では擁護できるものではなく、言語分析の反体系性を称揚しているように見える『探究』時の Wittgenstein の idea を取り入れつつ、full-blooded な the theory of meaning が、Dummett のものとは異なった形態として、いかなる姿を取るのかを、検討しているもののようです。言葉のいみについての理論もしくは話が、体系性を取るはずだと考えたであろう Dummett の見解と、それは体系性を持つようなものでもないし理論などというものでもないと主張したであろう Wittgenstein の見解という、一見両立しがたいと思える見解を、本書の著者はうまく編み合わせようとされているみたいです。


英語論文類: Leśniewski, Słupecki, Russell, Leibniz, Bocheński

  • Jerzy Słupecki  ''Towards a Generalized Mereology of Leśniewski,'' in: Studia Logica, vol. 8, no. 1, 1958
  • Vito F. Sinisi  ''Nominalism and Common Names,'' in: The Philosophical Review, vol. 71, no. 2, 1962
  • Jan Woleński and Jan Zygmunt  ''Jerzy Słupecki (1904–1987): Life and work,'' in: Studia Logica, vol. 48, no. 4, 1989
  • Gregory Landini  ''[Review of] Logic as a Universal Science: Russell’s Early Logicism and Its Philosophical Context. By Anssi Korhonen,'' forthcoming in The Philosophical Quarterly (2013)
  • Fred Feldman  ''Leibniz and "Leibniz' Law",'' in: The Philosophical Review, vol. 79, no. 4, 1970
  • E. M. Curley  ''Did Leibniz State "Leibniz' Law"?,'' in: The Philosophical Review, vol. 80, no. 4, 1971

Sinisi 先生の論文は、半ば Leśniewski の Ontology の無定義語 ε の話になっています。
最後の二つの Leibniz' Law に関する論文は、Leibniz が自身の名前を持つ同一性についての原理として、何を述べていたのか、あるいは何を述べていなかったのか、この点を探るものです。

  • Studies in East European Thought, vol. 65, no. 1, 2013, Special Issue on Józef Maria Bocheński - The Heritage of Ideas: From Logic to Wisdom

この journal の Bocheński 特集から、次を入手。

  • Dariusz Łukasiewicz and Ryszard Mordarski  ''Introduction''
  • Jan Woleński  ''Józef M. Bocheński and the Cracow Circle''
  • Marek Lechniak  ''J.M. Bocheński's Method of Philosophical Analysis and Contemporary Applied Ontology''
  • Mariusz Grygianiec  ''Two Approaches to the Problem of Universals by J. M. Bocheński''


和書: Was sind und was sollen die Zahlen?

  • 足立恒雄  『数の発明』、岩波科学ライブラリー 219, 岩波書店、2013年


邦語論文類: Leśniewski, Dedekind, Logic

  • 高野道夫  「Lesniewski の公理とその周辺」、『新潟大学教育学部紀要』、自然科学編、第21巻、1979年
  • 高野道夫  「初等存在論と第2階論理」、『新潟大学教育学部紀要』、自然科学編、第22巻、1980年
  • 八杉滿利子  「デデキントの数学観 大学教授資格取得講演における概念拡張の仕組み」、『哲学研究』、京都哲学会、第五百九十六号、2013年10月
  • 田中一之  「12 田中一之」、小谷元子編、『数学者が読んでいる本ってどんな本』、東京図書株式会社、2013年

八杉先生の今回の論文とよく似た論文に、以下があります。

  • 八杉滿利子  「数学における概念拡張の仕組み デデキントの研究計画に沿って」、『哲学論叢』、京都大学哲学論叢刊行会、第39号別冊、2012年

この2012年論文は survey 論文で、今回入手の2013年論文は、先生ご自身の見解を前面に押し出して展開している論文のようです。

最後の田中先生の文は、数学者の先生方が思い入れのある本、おすすめの本を紹介するという企画本のなかに収められているもの。先生の best 3 は、

    1. Richard Jeffrey  『形式論理学 その展望と限界』
    2. J. R. Schoenfield  Mathematical Logic
    3. S. G. Simpson  Subsystems of Second Order Arithmetic

です。Schoenfield さんの本はものすごく有名なので、ここに挙げられるのはもっともだろうと思われます。Simpson さんの本は田中先生のご専門の本ですし、やはりもっともだと思われます。意外なのは Jeffrey さんの入門書です。この本もとても有名なので、当然と言えば当然なのですが、推挙されている理由は、やさしい tableau 法を用いながら、他ではあまり扱われていない結果まで上手に解説しているから、ということのようです。やさしいのに奥深いということからみたいです。なるほど。