Definitions, Kripke, Euclid

洋書

  • David Charles ed.  Definition in Greek Philosophy, Oxford University Press, 2010/2014

先日、定義論に関する論文を拝読しました。そこで私にはとても意外なことを教えられました。私はまったく気づかなかったことで、おそらく多くの方々も気づいておられないことだと思います。できれば後日、この日記上でその内容をご紹介したいと思います。それはとても簡単なことなのですが、紹介するとなるとできるだけきちんと説明したいので、今すぐにはちょっとできません。忙しくて時間がないのです。いつか何とかして説明したいです。ただし、そのことにほとんどの方々はご興味をお持ちにならないとは思いますが…。このような経緯もあって、上記の定義に関する本を入手。この本の hard はかつて出版された際に手に取って見てみたことはあったのですが、現代的な話題、数理論理学的な話題とは直接つながっていないように見えたので、その時は購入を見合わせました。しかし、今回、paper で出たこともあり、先ほど述べた定義論の論文を読んで、定義に関し興味を再度抱いたこともあって入手させてもらいました。この本の編者による intro. が30 page 近くあって、しっかりしているように見えるので、できればまずはこの intro. だけでも拝見したいと思います。だけど、そんな時間があるのかどうかは不明ですが…。

  • Paul W. Humphreys, James H. Fetzer eds.  The New Theory of Reference: Kripke, Marcus, and Its Origins, Kluwer Academic Publishers, Synthese Library, vol. 270, 1998

今、Kripke さんの革新的な ideas の起源を少し調べていて、その関係で本書を入手。この本は今までにも何度か手に取って一部拾い読みしていたことはありましたが、本自体は持っておりませんでした。今回、hard ながら1万円を大きく下回る価格で新品のものが売られていましたので、これはものすごくお買い得でもあることから購入。普通に買うと2万円を超えてしまうと思いますが、hard の新刊ながら、なぜだか1万円をずっと下回る価格になっていた。だから変なものをつかまされるのではないかと思っていたのですが、入手してみたら、全然問題がなく、ピカピカの新品でした。装丁もばっちりです。これは非常にお買い得でした。どうしてこんなに安いのかと思い、本をよく見てみると、版元が Springer ではなく、元の Kluwer になっている。今、Springer から普通に買うと2万円を超えると思うのですが、どうやら今回入手した本は、Kluwer の digital data をどこかの agent が POD で製本化したもののように推測します。間違っていなければですが…。

それはさておき、この本は、おそらく非常に物議をかもしたことで有名な本だと思います。かなりいわくつきの本だと思います。人々のなかには「こんなひどい本、買うべきではない」と述べる方もおられるかもしれません。この本に収録されている一部の論文を除き、本書には問題のある論文も載っているのかもしれませんが、一応歴史的な記録として購入し、参考になる部分は参考にさせていただきたいと思っています。何がどのように問題なのかについては、今回購入しました本の書評である次の文章を参照してください。

  • Stephen Neale  ''No Plagiarism Here: The Originality of Saul Kripke,'' in: Times Literary Supplement, February 9, 2001, pp. 12-13.

この文章は、Kripke さんの業績を短い page 数の中でとてもわかりやすく説明しています。かなりわかりやすいと思います。短い紙数ながら、とてもよくまとまっているので、読んでいて大変参考になりました。ただし、この手の話題について、まったく知らない方が読んだ場合には、また別かもしれません。この手の話題に関し、いくらかかじったことがあるという人が読むと、こぎみよくまとまっているので感心するかもしれません。

それはよいとして、この書評では、書評対象の本に載っている Quentin Smith さんの論文を非常に強い調子で批判しています。完全に叱責していると言っていいと思います。Smith さんが単純な間違いを犯しているだけならば、こんなに激しくしかりつけられるということはなかったと思いますが、Smith さんのやっていることがあまりにでたらめであり、その点を指摘されても反省せず、なおも抗弁、強弁し続けることに、悪意を感じることから、書評子の Neale さんは厳しく叱責しているのだろうと感じます。有名な話ながら、私はまだ詳しいことは知らないのですが、Smith さんは、何だかんだと言いながら、Kripke さんの革新的な ideas は既に Ruth Barcan Marcus さんによって得られていて、しかもその ideas を Kripke さんは Marcus さんから暗に学んでおきながら、自分が最初に思いついた ideas だとして発表し、成功をおさめたのだ、と主張されているようです。しかしこの主張を根拠づける Smith さんの論証は、いい加減であり、でたらめで、まったく間違っていると、書評対象の本に載っている Soames 論文、Burgess 論文で検証されているみたいです。書評を書いた Neale さんも同様に反論を書評中で記しておられます。そして、Neale さんは 'Smith's papers are not worthy of discussion.' と述べ、Smith さんは様々な基本的概念の区別ができていないと言い、箸にも棒にもかからないと評しておられます。Smith さんの論文は、元々は America 哲学会で発表され、その後、journal の Synthese に掲載され、そして今回、書評対象の本に載って Synthese Library Series の1冊として出版されたのですが、書評子の Neale さんは、悪意を持っている Smith さんを学会で発表させた America 哲学会も問題視し、さらにこんなひどい内容の文章を journal の Synthese に載せることを受理し、Synthese Library Series でも出版した当時の編集長 J. Hintikka さんも、責任を取るべきだとしています。その上、書評対象になっているこのような問題のある本を出した当時の出版社 Kluwer Academic Pub. を Neale さんは責めています。出版社を咎める際の Neale さんの言葉がちょっと皮肉がきいているように思いますので引用してみると、書評の末尾辺りで次のように書かれています。'Part of the problem may be the publisher. Kluwer routinely pumps out overpriced volumes of poor philosophical quality. Perhaps it is now mostly interested in gouging money from libraries with its aptly named Synthese Library volumes.' 何でもかんでも「総合」して出せばいいってもんじゃない、ということでしょうね。

今問題にしている本を私が購入したのは、Kripke さんの革新的な ideas の源を調べるためだったのですが、その革新的な idea の起源について、ある論文を読んでいて意外なことを教えられましたので、それを後日この日記でご紹介できればと思います。これもまた私にはすごく意外だったので、興味深いです。たぶん多くの方々も気がついていないことで、意外に感じるのではないかと思います。たぶんですけども…。いつそれをご紹介できるかは、わかりませんが…。

ここまで、間違ったことを書いておりましたらすみません。謝ります。


和書

  • 吉田信夫  『ユークリッド原論を読み解く 数学の大ロングセラーになったわけ』、数学への招待シリーズ、技術評論社、 2014年