Her Words I Was Deeply Moved By, Part 2

先日来、次の本を拝読しているのですが、

  • 石田由香里、西村幹子  『<できること>の見つけ方 全盲女子大生が手に入れた大切なもの』、岩波ジュニア新書 791, 岩波書店、2014年

胸の熱くなるような言葉がいくつかありましたので、紹介したいと思います。今回はその二回目です。

早速そのような言葉を引用したいと思います。以下の引用文中の下線は、引用者によるものです。私はこの下線部分に感銘を受けました。

 2. やっと見つけた「できること」

 [全盲の私が入学した] ICU の図書館内には、特別学習支援室といって、障害がある学生が学習サポートを受けるための部屋があります。その部屋があまりにも物置みたいになっていたので、ちょっと人に見せられるレベルに片づけようよとスタッフといっしょに本棚の整理をしていた時、『明日への大学』という一冊の本を見つけました。公に出版されたものではないのですが、ICU に一番最初の視覚障害学生として受け入れられた、草山こずえさんの在学記録です。
 三〇年以上前、全盲である彼女がみんなと同じように単位を修得して卒業できるだなんて大学側は信じていなくて、自分の成績や学校生活しだいで、今後視覚障害学生が続いて入学できるかどうかが決まるとプレッシャーを感じていたこずえさんが、四年間全力を尽くしていた様子が、周囲の人たちの文章で語られています。
 視覚障害に甘えてはいられない、特別扱いはされたくない…。当時はパソコンもないので点訳にも今より時間がかかって、したがって教科書の点訳が授業に間に合わないのが普通なのに、それを補うために夜もあまり寝ずに勉強し、寮長まで務めて、過労で倒れたこともあるとその本には書かれています。
 点字は、普通に目が見えている人と違って、斜め読みができないですし、下線部を探したり、図を理解したりするのにも時間がかかるので、試験を受ける時は一般の人の一・五倍の時間をもらえることになっています。でも、視覚障害を甘えに使いたくなかったこずえさんは、試験も一般の人と同じ時間内で受けて、それでも好成績を残しているんです。本の最初と最後の部分は、こずえさん自身によって書かれているのですが、「でもこうして、特別扱いされたくないと考えている私が一番、自分の障害を特別視していたことに気付きました」と述べられているんです。
 私にとって、ICU視覚障害者が入学する道を切り開いてくれたこずえさんは、憧れの人です。自分とは比べ物にならない、遠い存在と思っていた人です。でも三〇年ちょっと前にこの場所で、彼女も同じようなことを気にして、同じようなことに悩んでたんだなって。目が見える友達に負けたくない、変に気を使われたくない、視覚障害を甘えには使いたくない… そうやって頑張って、でもやっぱり厳しい現実もあります。
 そんな中で、負けてたまるか、負けてたまるかって思っているうちに、無意識に周囲の友達がライバルみたいになってしまう…。障害を特別視されたくないって思って必死な自分こそが、周囲対自分みたいな、むしろ自分を特別視してしまう…。
 でもこずえさんは、四年間の大学生活の最後に、答えを出しています。
 「周囲からいろいろと助けていただく代わりに、私にできることは誠実でいることだけです」
 [「回りに助けてもらう代わりに、回りの人に何ができるのか」と先生に問いかけられた] 高校三年以来、私がずっとずっと探し求めてきた答え、ここにありました。こずえさんが在学していたころは、今より本の点訳に時間もお金もかかったため、周囲の友達が分担して本を音読したのをカセットテープに録音し、それを頼りにレポートを書いていたらしいのです。ある意味、今の私よりずっとずっと周囲の助けを借りて過ごしているんです。でも、その本に記載されている周囲の人々の文章を見てると、誰一人としてそんなサポートをするのを迷惑だとは思っていないんですね。それどころか、こずえさんに憧れている後輩、音読することくらいしか私には手伝ってあげられないと悔しそうに書いている友達…。こずえさんの魅力だからこそですね。
 私の母親は、「お前が思ってる以上に障害者って邪魔なんや」と言いました。少しでも視力がある人の方が会社にも採用される、全盲のお前は迷惑をかけることしかできないと。でもたぶん、それはちょっと違う気がするんです。同じことを頼まれても、それをどんな人からどんな雰囲気で頼まれたかによって、迷惑だと思ったり、むしろ喜んで手伝おうって思ったりする。障害があるかどうかとかじゃなくて、その人の人柄でずいぶん変わる。だったら私は、周囲の友達に負けてたまるかって頑張るんじゃなくて、むしろ周囲に愛されるような人になれるように努力した方がいいんじゃないかって。感謝の気持ちを持ってやりぬく人…、それは障害の有無など関係なく、みんなにとって魅力的な人だなと。こずえさんが言う、「誠実でいること」って、そういう意味だと思うんです。*1

胸打つものがありますね。下線部分にはちょっとしびれます。誠実でいることは難しいですね。常に誠実でいること、いざという時にも確かに誠実でいられることは、とても難しいことだと思います。

でも、石田さんには「あまり無理をしないでくださいね」と言いたいです。あんまり無理しすぎると、しんどくて耐えられなくなるでしょうから、あまり無理をしないでくださいね。

*1:石田、西村、70-73ページ。