Leon Henkin Was Wearing a Suit to Suit his Clothes to Student's in the Netherlands.

先日、次の本を購入しました。

  • María Manzano, Ildikó Sain, and Enrique Alonso eds.  The Life and Work of Leon Henkin: Essays on His Contributions, Birkhäuser/Springer, Studies in Universal Logic Series, 2014.

本を受け取った後、広場のベンチに座って、さっそく中を見てみると、以下のようなちょっと変わった題名の文章が入っているのがわかる。

  • Albert Visser  ''Henkin and the Suit.''*1

「Henkin とスーツ」、あるいは「Henkin と背広」。奇妙な題名だ。たった1ページほどの文章だから、その場で読んでみる。すると、これは Visser さんの Henkin 先生に対する思い出話だとわかる。少しほっこりする話なので、紹介してみます。ざっくりと紹介しますので、厳密には原文に当たってください。誤読しておりましたらすみません。


さて、時は1979年のオランダ。Visser さんは、Dirk van Dalen 先生を指導教官とする博士課程の院生でした。ある日、van Dalen 先生が Visser さんに頼みごとをしました。「今度、Henkin 夫妻がやってくる。その時、自分は海外に行く必要があって、夫妻のお供をできない。ついては Visser 君、きみが夫妻のお相手をしてくれないか? ただし、その際に注意がある。Henkin 先生は伝統的な大学の昔気質の先生だ。いつもよそを訪問した際は、きちんとした服の人にもてなしを受けていたはずだ。つまり、背広を着てネクタイを締めた人にね。だから君もそうできるよね?」

Visser さんは 'No!' とは言えないですし、「もちろんです」と言いたいところでしたが、はたと思った。「自分は髪を伸ばしていて、古びたセーターを着て、やっぱり古びたズボンをはいているような、服装に無頓着な人間であり、そもそも背広を全然持っていない。ちゃんとした背広をどこでどのように手に入れればよいのか。まいったな」と。でも、「そういえば、趣味のいい女友達がいるので、彼女に背広選びを手伝ってもらおう」と思い至り、お店を何軒も回り、彼女のアドヴァイスでばっちりのスーツとタイを手に入れて、さらには髪もきれいにカットして、それで夫妻をお迎えした。

こうして夫妻を滞りなくエスコートし、二人がオランダを離れる前の晩、送別のための夕食の際、ご夫妻とは気持ちよく話ができたので、Visser さんはスーツにまつわる事の顛末を話した。するとご婦人がすっかり面白がってくれて、こう言った。「そうね、そのスーツでお出迎えを受けたあと、Leon に言ったのよ、ここではまったくフォーマルな方がきっといいみたいね、明日からスーツにしたら、って」。

というわけで、それから毎日 Henkin 先生はスーツですごされたそうです。


Visser さんは、この自分の話に Henkin 先生の人柄が表れているという感じのことを述べておられますが、まったくそうですね。私が仮に Henkin 先生なら、Visser さんに、「ラフな格好のほうがいいでしょ。僕もそうするから、君も明日からそうしてよ」と言うだろうと思います。つまり、相手が自分の服装に合わせてくれるよう促すでしょうが、Henkin 先生はそうせずに、相手に自分の服装を合わせていたのですね。寛大と言うか、親切と言うか、えらいですね。気がきく人だったんですね。私には面倒くさくって、できないですね。脱帽です。


以上、誤読や誤解や誤記などがございましたらすみません。大まかな紹介文ですので、どうかお許しください。

*1:Manzano et al. eds., pp. 33-34.