The Story of the Bear of Berne in Switzerland

近頃、寝る前に横になりながら、次の本を読んでいます。

これは結構おもしろいです。この本については、昔『人権論』という題名で邦訳されていたとも思われるのですが、そのようなこともあって、なにかムズカシイ本のような印象があるものの、読んでみると、まったくそうではないことがわかりました。これは理論的な本というよりも論争の書であり、政治的な pamphlet の類いのように感じられます。

この夏は哲学者の戦争責任を考えていたのですが、その関係で自然権について若干調べていました。そのようなわけで上記の『人間の権利』を手に取ったのです。この本では America の独立と France 革命が擁護され、Edmund Burke の保守主義とイギリスの世襲による君主制が批判されています。このように書くとムズカシイ本に見えますが、先ほども述べたように中を見れば全然そうではなく、皮肉と風刺が連発されており、読んでいて何度も笑ってしまいました。この本は岩波文庫の白帯なのですが、私は岩波文庫の白帯をあまり読んだことがないものの、笑いながら読める白帯の本はたぶんあまりないように推測されます。もしも今言った America 独立と France 革命の擁護、Burke とイギリス君主制批判、それに基本的人権の淵源の一つに興味をお持ちであれば、この楽しい本をお勧めします。ただ、二部から構成されている本書の第二部に入って、ちょっと痛快さが第一部に比べて減じているように感じられます*1。ですから、全部読む時間のない方は前半だけでも取りあえずはいいかもしれません。


さて、今日はその上記の本を読んでいて見かけた興味深い小話を記してみます。ただし、ここでは英語原文を掲げてみます。西川先生の邦訳に何か問題があるというわけではございません。原文の内容の説明も致しません。私の comment も付けません。

以下の引用文では綴りが現代のものとは異なっている語もありますが、'[sic]' などを文中に挟まず、そのまま掲げます。Internet Archive にあった、著作権の切れた古い本で、閲覧者数の比較的多い本から引用します。なお、西川先生はこの版をもとに翻訳されたのではありません。

  • Thomas Paine  The Rights of Man; Being an Answer to Mr. Burke's Attack on the French Revolution, published by W. T. Sherwin, London, 1817, Internet Archive, <https://archive.org/details/rightsofman00painiala>.

† It is related that in the Canton of Berne, in Switserland, it had been customary, from time immemorial, to keep a bear at the public expence, and the People had been taught to believe, that if they had not a bear they should all be undone. It happened some years ago, that the bear, then in being, was taken sick, and died too suddenly to have his place immediately supplied with another. During this iterregnum the People discovered, that the corn grew, and the vintage flourished, and the sun and moon continued to rise and set, and every thing went on the same as before, and, taking courage from these circumstances, they resolved not to keep any more bears; for, said they, ''a bear is a very voracious, expensive animal, and we were obliged to pull out his claws, lest he should hurt the citizens.''*2

「おもしろい」と思った方は、『人間の権利』をお読みください。楽しむことができると思います。「おもしろくない、腹が立つ」と思った方は、やっぱり『人間の権利』をお読みください。たっぷり毒づくことができると思います。


『人間の権利』のような風刺の精神が、もっと今の日本には必要だと私は感じます。以上、誤解や無理解や勘違いなどがありましたらすみません。お詫び申し上げます。

*1:第一部で Burke 個人を攻撃していましたが、第二部では Burke への個人攻撃が背景に退き、イギリス政府批判が前面に出てきているので、個人攻撃が薄まり、痛快さが減じているものと思われます。

*2:The Rights of Man, Part II, Chapter IV, pp. 52-53.